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◆宗教的解釈が大胆な「方舟伝説」(65点)

聖書は世界最大のベストセラーで、中身は誰もがよく知るものだから映画にしやすいと思いがち。

だが意外にも、聖書の中で最もスペクタキュラーなノアの洪水伝説が映画に登場したことはほとんどない。宗教が絡むと解釈でもめるし、スケールが大きすぎて映像化が困難だったのが大きな理由だろう。

だが、ノアマニアかと思うほどに題材研究にのめりこみ、幾多の独自解釈を臆せず公表する胆力を持つダーレン・アロノフスキー監督がそこに現れた。さらに、今や何でもできるデジタル技術の進歩によりついに完全映画化が実現した。

預言者ノア(ラッセル・クロウ)は、天啓により神が大洪水をおこすことを知らされる。家族と方舟建設に乗り出した彼だが、その動きを目ざとく見つけた荒くれ集団が、方舟を虎視眈々と狙っていた。

ロード・オブ・ザ・リングの怪物のような連中が仲間になって、造船工事を手伝ってくれるあたりから、聖書至上主義者はついていくのが困難なほど頭がクラクラするに違いない。

だが、とくに宗教に思い入れのない一般的な日本人がみると、この斬新さは逆に面白い。

とくに洪水後、方舟内におけるドラマのほうが重要で、慈愛に満ちた預言者ノアのイメージが、ことごとく崩される流れには仰天する。

考えてみればひとつがいの動物と、自分の一家以外の人間を全員見捨てるのだから、この人物の精神状態が穏やかであるはずはない。

世界で自分たちだけが生き残るということが、いったいどれほどのストレスになるのか。そんな、思いも寄らなかったノア伝説のリアリティをこの映画は描いている。

なにしろ神様は具体的な支持をリマインダーとしてiPhoneに送っておいてくれるわけではない。ちょびっと光が放たれるとか、そんなあやふやな天啓なるもので、いったいどうやって理解しろというのか。そんなちっぽけなお告げを解釈するのがノアの仕事であるが、果たして彼の判断とて正しいのか。

その葛藤はノア本人にとって多大なストレスとなるものだ。何しろ今回のお告げは半端じゃない。人類は一度滅亡しなさいなどという、無茶ぶりにもほどがある最終指令なのだ。

自分は本当にこんな事を遂行していいのか、これで正しかったのか。そんなストレスに、慈愛に満ちたマザー・テレサ的な男では耐えられまい。

だから主演のラッセル・クロウは、そうしたイメージとは正反対な冷酷な一面を意識した役作りをしたと語っている。そんな彼の判断こそが、この映画の最大の注目点だ。

クロウ演じる新解釈ノアをみて日本人の我々がどう感じるか。物語の意義は各自に任された宿題だろうが、どこか希望を感じさせる鑑賞後感なのはありがたい。

■作品データ
ノア 約束の舟
Noah
2014年6月13日(金) TOHOシネマズ日劇1ほか全国ロードショー
2014年/アメリカ/カラー/138分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

スタッフ
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ダーレン・アロノフスキー、アリ・ハンデル
脚色:ジョン・ローガン

キャスト
ラッセル・クロウ
ジェニファー・コネリー
レイ・ウィンストン
エマ・ワトソン
アンソニー・ホプキンス
ローガン・ラーマン
ダグラス・ブース












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