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激映画批評

今月のオススメ


◆想定外と素っ頓狂を酒とともに楽しむ(55点)
 酒を飲みながら映画を見る機会というのは、ありそうで意外とない。自宅でDVDでもみながら、ならともかく、映画館にまでアルコールを持ち込んで楽しむのはよほどの……というのが世間的常識だ。
 しかし「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」だけは、そんな肩身の狭い思いをせずに鑑賞できる、数少ない「酒飲み御用達映画」かもしれない。
 タイトルからしてアルコール臭が漂うが、ストーリーも負けていない。学生時代、12軒のパブを一晩ではしごして「一人前の男」になる儀式?を完遂できなかった主人公(サイモン・ペッグ)。アラフォーになってもさえない人生を送っている彼が、その流れを断ち切るべく昔の仲間を招集して再び挑む。そんなバカ話だ。
 人生とエールが切り離せない、パブ文化が根付いたイギリスらしい映画だが、いかに12軒とて各々ビール一杯程度なら若けりゃなんとかなるだろう。この記事を読んでいる私含む大酒飲みの読者ならそう思うかもしれない。そんな程度のもんが映画になるのかね、と。
 ところがどっこい、なるのだ。なぜならこの映画は、4軒目のパブから先、誰一人想像もつかない展開になるからだ。その意味ではこの作品は厳重なネタバレ厳禁映画であり、平気でそれをやっているプレス資料や予告編など他の紹介媒体には気をつけてほしい。
 といってもこれだけではなかなか皆さんの足を劇場に向けるには弱いだろうからもう少し踏み込むと、本作の中盤から主人公一味の泥酔度合いは際限なくエスカレートするが、映画は同時に派手さを増し、出来のいい格闘シーンやあふれんばかりの謎の数々、どこに着地するかわからない展開を楽しむことになる。酔っ払いをマヌケに描写するおばか映画ではないかとの先入観は早々に早々に打ち破られるから、ノーテンキなコメディに笑いたい人には向いていない。そして、想定外のジャンル変換を許容できない偏屈なタイプの人もまたしかり。
 なので、適度なアルコールでこちらもこの不条理感を楽しむくらいがちょうどいいわけだ。さすれば作品の根底に流れる社会批判、ダメ人間賛歌のようなテーマにも共感できるだろう。

■作品データ
ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
The World’s End
2014年春、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
2013年/イギリス/108分/ユニバーサル映画 配給協力:シンカ、パルコ

スタッフ
監督:エドガー・ライト
脚本:エドガー・ライト、サイモン・ペッグ
製作:ナイラ・パーク、ティム・ビーバン、エリック・フェルナー
製作総指揮:ジェームズ・ビドル、エドガー・ライト、サイモン・ペッグ、ニック・フロスト、ライザ・チェイシン
撮影:ビル・ポープ
美術:マーカス・ローランド
編集:ポール・マクリス
音楽:スティーブン・プライス

キャスト
サイモン・ペッグ
ニック・フロスト
パディ・コンシダイン
マーティン・フリーマン
エディ・マーサン
ロザムンド・パイク












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