トップページ激映画批評

激映画批評

今月のオススメ


◆かつて「メリー・ポピンズ」を見た大人たちに(80点)

 昔好きだった映画や物語本に、意外な裏話やトリビアがあったりすると嬉しくなるものだ。そういう話があとから出てくるというのはそれだけ長く人々に愛されている証拠だし、たかが知れてるはずの子供時代の鑑賞眼を認められたようで、自尊心もくすぐられる。
「ウォルト・ディズニーの約束」(13年、アメリカ)は、もしかしたらそんな気分を味わえるかもしれないドラマ。64年公開のミュージカル映画の名作「メリー・ポピンズ」の知られざる製作秘話だ。
中心となるのは二人の登場人物。英国の児童文学であり先述の映画作品の原作本の著者P・L・トラヴァース(エマ・トンプソン)と、それをなんとか映画化したいウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)。ディズニー王国を築き上げ、ハリウッドのキングといわれていたこの絶対権力者と、その権威を何とも思わぬ超頑固者のトラヴァースの、20年間にわたる綱引きの結末が描かれる。
映画は、トラヴァースが脚本づくりにあれこれケチをつけまくって製作現場を翻弄するコミカルな現代パート(1960年代)と、彼女が愛する父親と過ごした少女時代(1900年代)のふたつを行き来しながら進行する。後者は、なぜこの原作者がメリー・ポピンズなる不思議な物語を紡ぎだしたのか、そしてなぜここまで頑迷な態度で映画化を拒むのか、その理由の謎解きとなる重要なパートとなっている。
トム・ハンクス演じるウォルトの、いかにも鷹揚で憎めないアメリカ人キャラクターがいい味を出している。トラヴァースとの丁々発止のやり取りを楽しんでいると、やがて「少女時代パート」が急展開し始める。そして、あのメリー・ポピンズの、明らかにモデルとなる女性が登場するあたりから、こりゃ大変な秘密が明らかになるぞ、的な興奮と、悲劇的な執筆背景が見えてくる不安感にさいなまれ、目が離せなくなる。
映画の最初と最後を飾る「チム・チム・チェリー」のどこかせつない旋律が、あの名作映画の舞台裏で繰り広げられた感動のドラマを美しく飾る。あの映画になにがしかの思い出がある人が見たら、間違いなく長くお気に入りの一本となる佳作の登場といえる。

■作品データ
ウォルト・ディズニーの約束
2014年3月21日(金・祝)全国公開
2013年/アメリカ/カラー/126分/配給:ディズニー

スタッフ
監督:ジョン・リー・ハンコック
撮影:ジョン・シュワルツマン
脚本:ケリー・マーセル スー・スミス

出演:
エマ・トンプソン
トム・ハンクス












ページの先頭へ戻る