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激映画批評

今月のオススメ


◆本国での評価はさんざんだが、これが意外な掘り出し物(75点)

 ロバート・デ・ニーロとジョン・トラボルタ。スーパースター同士というわけではないが、これまで共演したことのない組み合わせの中ではかなりユニークなものだろう。映画好きの間でなら、もっと話題になっていい気もするが、まったくその気配もなく過ぎ去ろうとしている。それではあまりにもったいないよ! といいたくて、私は当サイトの読者に紹介したくなった。
中身はシンプルなサスペンスアクション。まずデ・ニーロ演じるベンジャミンは、アパラチアの山奥で隠遁暮らしをしているワケありな退役軍人。彼が山中で出会うのが、トラボルタ演じるセルビア人の元兵士コヴァチだ。二人ともボスニア紛争に参加していたことがわかり意気投合して酒を飲むが、じつはコヴァチには隠された目的があった。
ここはバラしてもいいと思うのであえて書くが、コヴァチはボスニア紛争における米軍の残虐行為に関連して、ある恨みを持っている。それを晴らすため、彼はベンジャミンと森の中で対決することになる。
弓矢をメインウェポンとした、原始的なガチンコタイマン勝負が本作最大の見せ場となる。武器を失えば作り、相手を出し抜いて一撃を食らわそうとする。静かだが、どちらの知恵と勇気、経験が上かをぶつけあう、非常に見ごたえあるバトルがほぼ全編続く。
ところでこの戦い、途中から現実感が薄れ、妙な違和感を感じるようになる。逆転に次ぐ逆転、それはあまりに荒唐無稽だ。そのあたりが、批評家筋から嫌われた原因でもあろう。確かに意外な結末も含め、小ばかにする人が多そうな映画だな、というのはわかる。だがそれは浅い見方だ。
この、一見おかしな逆転の連続構造は、およそ戦争というものの本質を暗喩している。最初は善と悪の対立構図に見えたものが、逆転するとその立場もひっくり返り、観客は戸惑う。やがてその境界はあいまいになり、自分がどちらの立場にいるのかさえ、わからなくなっていく。
これこそが本作に仕掛けられた最大のメッセージ。つまりこの映画は、演技派ふたりの戦いを見ている観客に、同時に「戦争」の疑似体験をさせようという試みとなっている。とんでもない野心作だが、あまり理解されなかった点は気の毒だ。
残酷すぎる戦争の真実を、いくらかのファンタジーと娯楽性とともに見せる。これは映画にしかできない芸当であり、本作はそれがなかなかうまくいっている。寓話的に現実を見せるというのは、大人の知的遊戯そのものであり、理解できる人にとっては何よりの深みとなってくれるだろう。

■作品データ
キリングゲーム
KILLING SEASON
2014年1月11日(土)、新宿バルト9 他全国ロードショー
2013 年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/5.1ch/85 分/PG12/配給:ショウゲート 協力:アミューズソフトエンタテインメント

スタッフ
監督:マーク・スティーヴン・ジョンソン(『ゴーストライダー』シリーズ)  
脚本:エヴァン・ドーハティ(『スノーホワイト』)

キャスト
ロバート・デ・ニーロ
ジョン・トラボルタ
マイロ・ヴィンティミリア












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