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激映画批評

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◆リアルタイムで狙われている男の暮らしを疑似体験(65点)

 2010年に人権運動家の劉暁波が初のノーベル平和賞を受けながらも政府からは迫害。いまも各地で反政府暴動が散発し、先日は天安門でも爆破事件が起きた。経済成長著しい中国も、一皮むけば言論の自由が制限された、恐ろしい一党独裁の素顔が見え隠れする。
こうした国で好き放題モノをいうのは命の危険が伴うわけだが、それを実践している男がいる。「アイ・ウェイウェイは謝らない」(91分、アメリカ)は、彼の綱渡りな日常に密着した緊迫感あふれるドキュメンタリーだ。
中国出身のアイ・ウェイウェイとはデザイナーであり芸術家であり建築家、そして民主運動家でもある。北京オリンピックの競技場"鳥の巣"をデザインした人物といえば、このジャンルに疎い人でもその凄さがわかるだろうか。ああした国で五輪といえば、スポーツ以前に国威発揚の場として政府は最大限利用するのが常。そんなプロパガンダの顔たる競技場を任されたのだから、「政府側」の人間だろうと思いきやさにあらず。アイ・ウェイウェイは五輪後、「あれはプロパガンダだった」などと明言、政府の顔に潰すとともに、ツイッターやブログでさらなる政府批判を繰り返し、今では全世界的に影響力を持つ重要人物と評されている。
映画はそんな彼の芸術創作の様子から、外食にさえ公安がついてくるきな臭い日常生活まで、ぴったりくっついて取材した映像を見せる。
いったい彼が常に動き続け、人々の話題に上る過激な言動、芸術作品を発表するのはなぜなのか。それは、言うまでもなくそうやって目立ち続けなくては命がないという、切実な状況からだろう。人々の注目の的になっている間は、中共政府の小銃の的にはならずに済む。この映画は、そんな彼の命がけの戦いを伝えてくれる。
何人死んで何が燃えて誰が逮捕されて……。そうした新聞記事からではこの「空気」は伝わってこない。あの国で、行動を監視され下手を打てば命が狙われるという暮らしがどんなものか。その恐ろしさの一端を、実感を伴う形で伝えていることだけは間違いない。

■作品データ
アイ・ウェイウェイは謝らない
Ai Weiwei: Never Sorry
2013年11月1日公開
2012年/アメリカ/91分/カラー/デジタル/ビスタ/5.1ch/中国語?英語/日本語字幕:石田泰子/字幕監修:牧陽一 配給:キノフィルムズ 宣伝:FTF 宣伝協力:フリーマン・オフィス

スタッフ
監督:アリソン・クレイマン

キャスト
アイ・ウェイウェイ













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