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激映画批評

今月のオススメ


◆タブーをユーモラスに描く勇気あるドラマ(85点)

 このサイトでは大人の鑑賞に耐える作品を、という視点で毎回チョイスしているのだが、「セッションズ」(95分、米国)はまさにそれに当てはまる一本。R18+指定だから、というのはもちろんだが、伝えるメッセージの奥深さは人生経験豊富な観客にこそ響くものだからだ。
6歳でポリオ(小児麻痺)を発症して以来、首から下がまったく動かなくなってしまったマーク(ジョン・ホークス)。だが明晰な頭脳と好奇心を持つ彼は決してへこたれることなく、ユーモアあふれる発想を武器にジャーナリスト、ライターとして自立していた。そんな彼だが、障がい者のセックス事情を取材したことをきっかけに、自分も女性と触れ合いたいとの欲求に悩まされることになる。
重度障がい者のセックスセラピーという、非常にデリケートな題材を扱った人間ドラマ。おちゃらけた部分はもちろんなく、中身は真摯な「生命賛歌」だ。
姦淫の罪というように、敬虔なキリスト教徒であるマークにとって、セラピストとはいえ妻でも恋人でもない女性とセックスをするのは大きなハードル。仲のいい神父(ウィリアム・H・メイシー)に「それでもしていいだろうか?」と聞いた時の、苦りきった神父の表情がいい。このやりとりはまだ映画の前半だが、ここでの神父の回答は、すでに涙腺崩壊のパワーを秘めた感動的なものだ。
そもそもハードルというなら、果てしなく高いそれが常にマークの前にはあるわけだ。首から下はピクリとも動かせない、一日のほとんどは鉄の棺桶のような呼吸器に入っていなくてはならない、短い会話の合間にも口元のホースをくわえて酸素を取り入れなくては命があぶない。セックスどころか、どうやって外に出るのか、人に会うのか。
こうした疑問に、驚くほどのバイタリティと工夫でこたえていくマークの姿は痛快そのもの。なにしろコトがコトだから、もはや隠すところは何もなく、率直に言って重度の障がい者がどういう苦労と苦悩のもとで日常を生きているのかがよくわかる。彼らを理解する助けとしては、これほど心に響く映画もあるまい。
スリルと興味で先が気になるハイテンポな脚本は、他に類を見ぬ面白さ。マーク・オブライエンの実話がベースと聞くと、その奇跡のようなドラマチックな展開を、より実感を持って味わえることだろう。相当なオススメ品だ。

■作品データ
セッションズ
The Sessions
2013年12月6日(金)新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
2012年/アメリカ/カラー/95分/R18+ 配給:20世紀フォックス映画

スタッフ
監督:ベン・リューイン
脚本:ベン・リューイン
撮影:ジェフリー・シンプソン
美術:ジョン・モット
衣装:ジャスティン・セイモア
編集:リサ・ブロムウェル
音楽:マルコ・ベルトラミ

キャスト
ジョン・ホークス
ヘレン・ハント
ウィリアム・H・メイシー
ムーン・ブラッドグッド
アニカ・マークス
リー・パールマン
アダム・アーキン













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