トップページ激映画批評

激映画批評

今月のオススメ


◆女性ウケのよさそうな家族ドラマ(60点)

 女性監督による女性映画を、男性向けサイトであるここで紹介するのも強縮だが、女性ウケのいい作品というのもそれなりに使い道があるもので、とくに本作は男性にとっても見どころがあるのでぜひご一読を。
主人公の百合子は、不妊治療中に夫が愛人と隠し子を作っていたことを知り実家に出戻ってきた。だがそこに一人暮らす父親(石橋蓮司)も後妻を亡くしたばかりで抜け殻のようになっている。百合子は血のつながらぬ母というべきこの後妻とのぎくしゃくした関係において、父親は頑固な性格から感謝の気持ちを伝えきれずに妻を失ったことについて、後悔を残したまま生きている。この二人ははたしてどう立ち直り、前に進んでいくのか、あるいはいかないのか……という人間ドラマ。
タナダユキ監督は75年生まれの若い女性監督で、『さくらん』(07年、蜷川実花監督)の脚本家としても知られる。今回も難しい設定のヒロインの内面描写を、感性豊かな演出で見せる。演じる永作博美は決して引き出しの多い女優ではないが自分に似合う役をよく知っており、安定感は抜群。子供が産めない女のみじめさ、卑屈さをうまく出している。よかれと思って子供にあるものを買い与えたら、その親に激怒されるシーンがあるが実にショッキング。ここなどは、この女優と女性監督ならではのリアリティを醸し出していて必見だ。
とはいえ、作品のテーマについては少々疑問符が付く点もある。たとえば監督は、他人であっても家族以上の絆で助け合えるとの考えを本作に込めたという。震災を経た2013年に公開する、それが必然性ということだ。
だが震災というならば、若い女性ほど家族の価値と孤独の恐ろしさをあのとき身に染みて感じたのであり、むしろ結婚・出産願望が高まった=家族主義に回帰したというのが実態であろう。2013年らしさというならば、家族至上主義こそがそれであり、監督の見立ては正反対ということになる。
とはいえ、そこまで深く考えずとも骨格のしっかりした家族ドラマとして、ちゃんとラストに泣ける見せ場も配置してあり無難なつくり。
男性目線的には石橋蓮司が、手伝いに来た謎のネアカすぎる家政婦役・二階堂ふみと入浴したり(二階堂はすごいダイナマイトバディ)、四十九日についての爆笑のかけあいを繰り広げるなど意外なほどチャーミングな見せ場を演じているのが面白い。これらのシーンくらい笑える要素をたくさん入れ込むことができていたら、相当な佳作に化けていただろうと思う。

■作品データ
四十九日のレシピ
2013年11月9日(土)新宿バルト9、有楽町スバル座他全国公開
2013年/日本/カラー/129分/配給:ギャガ

スタッフ
監督:タナダユキ「百万円と苦虫女」「ふがいない僕は空を見た」
原作:伊吹有喜氏の人気小説
脚本:黒沢久子「キャタピラー」
製作幹事:WOWOW ポニーキャニオン

キャスト
永作博美
石橋蓮司
岡田将生
二階堂ふみ
原田泰造













ページの先頭へ戻る