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激映画批評

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◆そこにいない人までも描いた秀作(65点)

 日本人が最も好きな画家のひとりルノワール。ぼかしを多用した淡くて暖かい独特の色彩は、美術館で見るとひときわ目を引く。被写体は桃色の肌が印象的な、ややぽちゃな裸の若い女ばかり。芸術家というより見る人が喜ぶものを描いた「職人」のイメージが濃い、まさに美術界のエンターテナーだ。
「ルノワール 陽だまりの裸婦」(111分、仏)はそんな彼のひ孫による原作を劇映画にしたもの。おそらく他のどの画家の伝記ものより、はるかに興味をひかれる人が多いだろう。
日本の映画ファンにも信奉者が多い台湾出身の名カメラマン、マーク・リー・ピンビン撮影による映像は、映画自身がまさにルノワールの色、タッチを再現したソフトフォーカスな美しいもの。まず何より、この「絵」に無条件にうっとりとさせられる。
内容はルノワールの晩年を描いたもので、主なる登場人物は彼のほか、のちに世界的大映画監督になる次男のジャン、そしてルノワール最後のモデルといわれるアンドレ=通称デデ。この、上昇志向の強い小娘が、ルノワール父子から(微妙に違った意味での)寵愛を受ける様子を中心に展開する。
まずは何も考えず、リューマチに侵された老ルノワールが最後の日々を過ごした広大な農園レ・コレットの、ヒミツの花園的というべきファンタジックな風景に酔っていただきたい。
動くルノワール絵画のようなこの景色の中で、デデ役クリスタ・テレ21歳の、これまたルノワール絵画としか言いようのないピンクの肢体をたっぷりと味わう。彼女の豊かなバストとくびれたウエスト、非の打ちどころのないヒップラインをみると、美術史に残るギャル好き&胸フェチたるルノワールが創作意欲をかきたてられた、その当時の様子を疑似体験できるというものだ。
ところで、じつはルノワールの人生にはこれとは別にファムファタール=運命の女というべき女性がいたのだが、そうした予備知識はあえて必要ない。この作品に出てくる、父子の間をかけぬけた不思議な女性デデ。彼女がどういう縁で彼らのもとにやってきて、どんな運命をたどったのか。それを見てから知っても十分。むしろそのほうが、この映画にもちゃんとその運命の女が(一度も登場しないにもかかわらず)描かれていたことに気づき、新たな感動を得られることだろう。

■作品データ
ルノワール 陽だまりの裸婦
Renoir
2013年10月4日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他、全国ロードショー!
第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門クロージング作品
2012年/フランス/カラー/アメリカン・ビスタ/ドルビーデジタル/111分/PG12 提供:クロックワークス、コムストック・グループ 配給:クロックワークス、コムストック・グループ

スタッフ
監督:ジル・ブルドス
原作:ジャック・ルノワール
脚本:ジェローム・トネール、ジル・ブルドス
撮影:マーク・リー・ピンビン
音楽:アレクサンドル・デプラ

キャスト
ミシェル・ブーケ
クリスタ・テレ
バンサン・ロティエ
トマ・ドレ













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