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激映画批評

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◆熟年カップルの恥ずかしいリアルに堂々と向き合う(70点)

 日本映画、つまり日本人の感覚で意外と描きにくいのが「熟年夫婦のリアル」だ。いや、別にやろうとすればできるのかもしれないが、そういうものが仕上がったとしても見るほうがつらい。これは独特の恥じらいの感覚というほかはない。
その点アメリカンの連中は違う。「31年目の夫婦げんか」(100分、アメリカ)なんてタイトルからは、茶の間でチャンネル争いをするほのぼのしたホームドラマを我々は想像するが、この映画は全く違う。本作に最も適した邦題をつけるとすればそれは「結婚31年目のセックスレス対策・実践編」だ。
主人公夫婦を演じるのはアメリカ一の演技派メリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズ。亭主関白っぽいこの夫婦、一見子供たちも独立してつつがなく毎日を過ごしている、かのように見える。だがそんな風に思っているのは夫だけで、妻は愛されていない孤独と不安を抱えている。そしてここからがさすがアメリカ人なのだが、彼女は勝手に滞在型の結婚カウンセリングに申込み、二人分の航空チケットを取ってしまう暴挙に出る。
大金を払ってまで、そんな怪しげなカウンセリングを受けたいのかと思うが、この内容がもっとすごい。課題が毎日だされるのだが初日は「二人でただ抱き合って眠ること」。むろん、これをクリヤーするとどんどんディープな難題が出されることになる。
それを見て分かったが、要するにこれは結婚31年目のカップルが、再びセックスするようになるための手助けそのもの。そこまでしても肉体的コミュニケーションを求めるアメリカ女性の感覚と、それを肯定的にみつめる映画の視点、すなわち米国民のコンセンサスに日本人は圧倒されるだろう。
しかしこの感覚的ギャップこそが、外国映画を見る醍醐味でもある。個人的にはもうその年になったら空気みたいな二人でいいじゃないの、と思わぬではないが、愛情の熟成を風化ととらえ、必死に抗う姿もまた人間味がある。それにカウンセリングの内容はなかなか実践的で、試せるものも少なくない。
これが日本映画なら恥ずかしいが、アメリカ映画ならコメディとして見られる。そんなわけでそれほど恥ずかしくなくいられるから、我こそはと思う倦怠期夫婦はさりげなくパートナーを誘ってみてはどうだろう。劇場内は、31年どころか結婚3年目くらいのカップルだらけになっていたりするかもしれないが。

■作品データ
31年目の夫婦げんか
HOPE SPRINGS
2013年7月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテ他にて公開
2012/アメリカ/100分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:関 美冬 配給:ギャガ

スタッフ
監督:デビッド・フランケル
製作:トッド・ブラック、ガイモン・キャサディ
製作総指揮:スティーブ・ティッシュ、ジェイソン・ブルメンタル、ネイサン・カヘイン、ジェシー・ネルソン
脚本:バネッサ・テイラー
撮影:フロリアン・バルハウス
美術:スチュアート・ワーツェル
衣装:アン・ロス
編集:スティーブン・ワイズバーグ
音楽:セオドア・シャピロ

キャスト
メリル・ストリープ
トミー・リー・ジョーンズ
スティーヴ・カレル










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