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激映画批評

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◆謙虚な視点が好感度高い人間ドラマ(75点)

 上から目線で批評するタカビーキャラの身で言ってる場合じゃないが、謙虚な立ち位置の映画には好感が持てるものだ。とくに文芸作品などにみられるが、大したセンスもないくせに芸術でございとお高く留まっている作品。あるいは社会派映画なら、俺様は正しいんだといわんばかりの押しつけがましい主張。そういうものは私の出身である東京の下町ではただ一言、「野暮」と言われて終わりだ。
そんな中、その対極に位置する好感度の高い人間ドラマに出会った。「樹海のふたり」(124分、日本)がそれで、お笑い芸人のインパルスが主演、富士の樹海で自殺者を追いかけるディレクターの物語。──なんて解説を聞くと、センセーショナリズムの申し子的な、奇をてらっただけのチープ作かと疑う人も多かろう。何を隠そう私もその一人だったが本作は違った。見れば、真面目に富士でロケをしていて低予算のわりに映像に重みがあるし、脚本は骨太、二人の演技も抑えが利いていて上々と、実に真剣なドラマであった。
ストーリーは、業界最底辺のディレクター二人(インパルス板倉&堤下)が、樹海のドキュメンタリーを撮ろうと決意する展開。負け犬同士が一発逆転を狙い、かつ自殺者を救おうと考えるあたりが共感を誘う。
世界遺産に登録されたばかりの富士山は、しかし自殺の名所という暗部がある。誰もが興味を持ち、覗き見したい題材だが、ドキュメンタリータッチの本作はそうした好奇心をも十分に満たしてくれる。探索時の命綱となるビニール紐やGPSなど独特のアイテム、自殺者は午後のバスでやってくるといったトリビアなど、見どころは少なくない。二人が粘り強く取材を重ねてついにそれらしき人物と遭遇する場面の緊迫感は、劇映画であることを一瞬忘れてしまうほどだ。
何より素晴らしいのは、この手の映画にありがちな偽善的な主張が皆無な点。すべては、二人が取材対象から気づかされたという、謙虚な視点からの結論。かといって卑屈さもなく、不自然なハッピーエンディングでもない。無理をしていないから起伏の激しい派手な見せ場も皆無だが、大人同士で鑑賞するならこういうドラマがいいと思う。

■作品データ
樹海のふたり
JYUKAI - MOUNT FUJI SUICIDE FOREST
2013年7月6日(土)ユーロスペースほか全国順次公開!
2013年/日本/ビスタサイズ/HD/上映時間124分 配給:アーク・フイルムズ

スタッフ
監督・脚本:山口秀矢
エグゼクティブプロデューサー:柏井信二
プロデューサー:相川弘隆 藍澤幸久 徳永一彦
撮影:山崎裕
美術:柳谷雅美
録音:森英司
照明:山本浩資
音響デザイン:玉井実
編集:佐藤康雄
衣装:星真由美
ヘア・メイク:若林奈津子
助監督:近藤有希
制作担当:澤井克一
音楽:関口知宏 エンディング歌:カズン「IBUKI」
製作:『樹海のふたり』製作委員会(いまじん、えふぶんの壱、キメラ、メディア・バスターズ)
配給:アーク・フイルムズ

キャスト
板倉俊之(インパルス)
堤下敦(インパルス)
きたろう
遠藤久美子
烏丸せつこ
関口知宏
長谷川初範
新井康弘
藤田弓子
中村敦夫(特別出演)









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