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激映画批評

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◆したたかだが、命がけで情報発信を続ける監督(65点)

 アメリカや日本のように言論の自由が(とりあえずは)保証されている国の場合は意識しないが、そうでない国の映画を見ている場合、そこに反政府的な物言いやメタファーを見つけたりすると思わず緊張感が走る。
「三姉妹 〜雲南の子」(12年、香港/フランス)もそんな一本で、これは中国を舞台に、中国で撮影された、中国人監督の映画作品。ただし、かの国の資本は一切入っておらず、悪名高い検閲制度も通っていない。ようするに、中国本国では上映不可能なドキュメンタリー映画だ。
どう考えてもタブーな香りがぷんぷんするが、内容は一見平凡な雲南省のある一家を追いかけた観察型ドキュメンタリー。しかし、解説もなければ編集がわかりやすいわけでもない。むしろゲージツ映画的とでもいおうか、妙に映像美にこだわっているようだったりと、このジャンルとしては違和感すら感じる演出となっている。あえてそうした装いをしなくては、この映画は為政者によって簡単につぶされてしまう。そうした性質の作品だからではないかと私は考えている。
なにしろこの映画の舞台である雲南省の寒村は、おそらく中国全土の中でも最貧地区。中央政府の統制すら、あまり及んでいない様子が伺える。
主な被写体となっている6歳と4歳の女の子は、10歳の姉のもと、3人で身を寄せ合って牧畜業を営み暮らしている。やがて観客の度肝を抜くのが、どうやらこんな年端もいかぬ娘たちが、幼児3人だけで暮らしていることが明らかになるくだり。父親は数百キロ離れた地方都市へ出稼ぎ中、母親はあまりに苦しい暮らしぶりに耐え切れなくなったか、家族を捨てて逃げた。お隣の国に、とんでもない一家があったものだ。
一人っ子政策の中国としては、罰金などどうせ払えないよとばかりに堂々とその禁を破っている様子を海外の人々に知られるのも嫌だろうし、爆発的な経済成長に取り残された、あるいは使い捨ての労働力として犠牲になった無数の屍のような家族がいることを知られるのもまたしかり、だろう。その意味で、こいつはきわめて体制側に都合の悪い映画といえる。
ワン・ビン監督がなぜ北京で生きていられるのか不思議なくらい過激さをはらんでいるが、だからこそ彼はゲージツ映画を作ったふりをするほかないのだろう。スリリングな、命がけの映像表現へのチャレンジが、現在進行中で行われている。

■作品データ
三姉妹 〜雲南の子
Three Sisters
2013年5/25(土)シアター・イメージフォーラム他にて全国ロードショー!
2012年/仏・香港合作/153分 配給:ムヴィオラ

スタッフ
監督:ワン・ビン
撮影:ホアン・ウェンハイ、リー・ペイフォン、ワン・ビン
編集:アダム・カービー、ワン・ビン







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