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◆小手調べのような再稼働だが(65点)

 アーノルド・シュワルツェネッガーは若いころから野望と上昇志向の塊のような男だった。ボディビルダー時代、前人未到のミスターオリンピア7勝をあげていたときも、ライバルに偽情報を伝えてポーズ時間を稼ぐなど、手段を選ばず勝利にまい進するエピソードを多数持つ。80年、政治家に転身したときもきっと将来の大統領職を念頭に置いていたに違いないが、健康問題や女性問題など、身体も政治生命もボロボロになって、このたび俳優業に戻ってきた。
そんなわけで長年のファンにとってはどうも出戻り感ばかり感じてしまう復帰作「ラストスタンド」(107分、米)だが、全米での興収も大コケレベルでその印象をさらに強める。ただ、それでも本作は日本のシュワファンにとっては案外イケるのではないかと私は思っている。
演じるのは国境の町の保安官。ここに、時速400キロのスーパーカーであらゆる治安当局の追跡をぶっちぎった麻薬王が逃走してくる。完全武装したワル仲間も合流、対するこちらは若手保安官など数名の半分素人みたいな仲間がいるだけ。強力な武器もない。どう考えても華麗にスルーがベストチョイスだが……。という話。
むろん、われらがシュワちゃんはこんな逆境でも迷わず悪の前に立ちふさがる。オリンピアを震撼させた圧倒的バルクはすでにない。だが彼には、政治家時代の経験からくるリーダーとしてのオーラがある。そんな姿で、熟したアメリカンヒーローを演じている。
幸いにして日本のファンには女性スキャンダルも政治家としての低評価も、ほとんど伝わっていない。彼がまだ夢を売ることのできる数少ない、しかし巨大な市場、それが日本だ。じっさい見てみると、スタントの多くを自らこなしたというだけあってCGでは得難い実感あるアクションを楽しめるし、単純な筋書きも古き良きアメリカ映画をほうふつとさせて悪くない。
それでも全盛期からすれば物足りない部分は多々あるが、65歳の俳優の10年ぶりの再稼働という点を考えたらこれでも十分。くたった革ジャンを身に着け駆け回る姿は単純に恰好いい。今でも憧れのヒーローそのものだ。

■作品データ
ラストスタンド
The Last Stand
2013年4月27日公開
2013年/アメリカ/カラー/107分/配給:松竹

スタッフ
監督:キム・ジウン
脚本:ジェフリー・マックナノフ、アンドリュー・ナウアー

キャスト
アーノルド・シュワルツェネッガー
ピーター・ストーメア
フォレスト・ウィテカー






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