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激映画批評

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◆ねばりまくる悪党の主人公に思わず共感(75点)

 スーパーイケメンの私が言うのもなんだが、格好悪い男が奮闘する話というのは、どこか共感を誘うものだ。もしこれに同意していただけるならば、「キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け
」(12年、米)の前売りチケットをいますぐ買いに行っていただきたい。
ダンディを絵に描いたようなリチャード・ギア主演映画で格好悪い男、というのもおかしな話だが、本作の彼はじっさいとてもカッコ悪い。
ギア演じる主人公は金融業界で成功し、莫大な資産と幸せな家庭を得た男。パッと見、どこにも不満のない人生を歩んでいるように見えるが、実はそうでもない。その証拠に彼は、日々のストレスを解消するがごとく、不倫相手の若い女(レティシア・カスタ)にハマっているのだった。60歳の誕生日を妻(スーザン・サランドン)や娘らが総出で祝ってくれているというのに、彼の心は彼女のもとにあった。
家族といるのに「寂しい」「いつ来てくれるの」「あたしとどっちが大事なの」的なメッセージを読むと、すぐにでも駆けつけたくて仕方がない。そんな男である。身の回りのすべてをうまくコントロールすることで富を築き上げてきた男が、今日も手軽なスリルと快楽を楽しんでいる、そんな風に観客の目には見えるだろう。
ところがどっこい、この後主人公はとてつもない試練に見舞われる。不倫相手とのゴタゴタが、人生のすべてを失うリスクへと急降下。身を守るためのストップロスを定めておいたはずなのに、そのすべてを吹き飛ばす激風。この展開は予想を超えるものがあり、かなりの恐怖を感じるだろう。
男は現在のポジションを守るため、なりふり構わず奔走する。その姿は滑稽ですらあるが、多くの男性にとって他人ごととは思えないリアリティを感じさせる。だからこそ深く共感するし、決して正しいことをしているわけではないこの男を応援し、その運命を見守りたくなってしまう。
ユニークなのは、法的には悪いことをしているこの男に、決して親友というわけでもない周りの人間たちがソコソコの協力をしてくれること。生き馬の目を抜くウォール街の猛者たちが、なぜそんなボランティアをしているのか。
それはおそらく、この連中のなかに一人も偽善者がいないからだろう。金の切れ目が縁の切れ目と割り切っているからこそ、自分の身に火の粉がかからぬ限り、何でも力を貸してくれる。シビアだし異常だが、そんな人間関係が彼の強みとなり身を守る最後の砦となる。悪人ばかりの業界だからこそ、これほどの逆境で粘ることができる。シニカルでブラックな、大人が楽しめるサスペンスだ。

■作品データ
キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け
Arbitrage
2013年3月23日、ヒューマントラストシネマ渋谷他全国順次公開
2012年/ アメリカ/カラー/ 107分/ ヴィスタ/ ドルビーデジタル/配給:東京テアトル、プレシディオ

スタッフ
製作:グリーンルーム・フィルムズ、スリーハウス・ピクチャーズ
脚本・監督:ニコラス・ジャレッキー
衣装独占協力:Brioni、Jill Stuart、J.Mendel
配給/東京テアトル/プレシディオ
協力/ハピネット
宣伝/マンハッタンピープル
宣伝協力/フレスコ

キャスト
リチャード・ギア
スーザン・サランドン
ティム・ロス
ブリット・マーリング
レティシア・カスタ
ネイト・パーカー






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