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激映画批評

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◆大統領選の年に挑発的な歴史映画(70点)

 紅白歌合戦にKPOP歌手が全員落選したことで象徴されているが、いまや韓流は風前の灯火。とくに映画ジャンルはひどいもので──というより以前から映画だけは韓流ブームに取り残される格好で、ろくにヒットも出ず、ブームを当て込んで痛手をこうむった映画会社も少なくないと聞く。大ヒット作「シュリ」のカン・ジェギュ監督の勝負作「マイウェイ 12,000キロの真実」(12年、韓)がコケた時点で、日本における韓国映画は完全に終わコンになったといってよい。
とはいえ変わらず大量生産されている韓国映画の中で、12年秋に800万人を動員した大ヒット作が「王になった男」(12年、韓)。年度を代表する映画ということで鑑賞したが、これがなかなかの面白さだった。
ときは1616年、李氏朝鮮王朝15代の光海君(イ・ビョンホン)は、暴君として恐れられていた。常に暗殺の危機にさらされていた彼は、道化師ハソン(イ・ビョンホン:二役)を影武者とするが、正反対のやさしい性格であるハソンの正体がいつばれるか、家臣らは気が気でなかった。
影武者ものというのは、案外たくさんある。黒澤明の「影武者」(80年、日)をはじめ、小説や漫画では「影武者徳川家康」(隆慶一郎)、「最上殿始末」(手塚治虫)が有名だ。この「王になった男」も、身分と性格が全く異なる平凡な男が王の影武者になる王道の設定で、そのギャップがもたらすエピソードをコミカルに描いてゆく。
この序盤のコメディ調が、ことごとくツボを外さず、心地よい笑いをもたらしてくれる。韓国映画は恋愛ドラマのイメージが強いが、真に優れているのはスラップスティックな笑いであり、それは YouTube ダントツの閲覧数世界一を誇るPSYの「GANGNAM STYLE」を見てもわかるだろう。韓国人には、確かに笑いのセンスがある。
もっとも本作はコメディー時代劇というわけではなく、実在の光海君の名を使用した大胆な歴史フィクションとして、リーダーの資質という普遍的なテーマを真面目に描いている。暴君である本物と、心優しい偽物。むろん、どちらかが一方的に正しいわけではないが、自分たちがどんなリーダーを選ぶべきなのか、この映画はちょっとした問題提起をしているわけだ。こうした挑発的な作品を大統領選の年に公開するとは、なかなか韓国映画界もおつなことをする。

■作品データ
王になった男
2013年2月16日(土)より 新宿バルト9、丸の内ルーブルほか全国ロードショー!

スタッフ
監督:チュ・チャンミン
脚本:ファン・ジョユン(『オールド・ボーイ』)
撮影:イ・テユン
照明:オ・スンチョル
音楽:キム・ジュンソン、モーグ
製作:リアルライズピクチャーズ

キャスト
イ・ビョンホン
リュ・スンニョン
ハン・ヒョジュ
キム・イングォン
チャン・グァン
シム・ウンギョン
パク・チア
シン・ジョングン
チョン・グクヒャン
ヤン・ジュンモ





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