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激映画批評

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◆最大級の日本リスペクトを感じる作品(70点)

 鮨というのはなかなか面白い食べ物だ。高級な店なら接待でふるまわれることもあるし、ここぞというときに女の子を連れていくにもいい。かと思えばファミリーで回転ずしというのは休日どこでも見られる風景だろう。むろん、冠婚葬祭の場にも欠かせない。変幻自在のジャパニーズソウルフードといえる。
そんな日本の食文化の総大将というべき鮨に魅入られたのがデヴィッド・ゲルブ監督。見た目は人懐っこくて鷹揚な典型的なアメリカ白人だが、実際は2歳のころから日本に何度もやってきて、ウニもこはだも大好物という、日本人以上に日本的な若者だ。
そんな彼が初の長編ドキュメンタリー映画の題材に選んだのが銀座の高級店「すきやばし次郎」。かねてからこの店を推している料理評論家の山本益博に連れられ、その味に衝撃を受けて以来、何日も通いこんで撮影許可を得た苦労作だ。
映画は87歳の今も現役でこの店を引っ張る小野二郎とその跡を継ぐ息子たちの人間ドラマと、二郎自身の職人哲学を編み込むように構成。アメリカ人監督らしいセンスが光るのは、マグロのセリ場面や、お店の仕込みシーンなどにみられるスタイリッシュな映像美か。海外のクリエイターは移動撮影にこだわる人が多いが、デヴィッド・ゲルブ監督もたった10席しかない「次郎」店内でさえ、まるでスペクタクルの舞台を撮るかのような空間移動を見せてくれる。
私は縁あって監督と話す機会を得たのだが、ここはデジタル一眼で撮ったんでしょうと聞いたら、我が意を得たりといった様子でいろいろ教えてくれた。こちらの予想通り、当初は従業員の邪魔にならぬよう大型カメラをあえて持ち込まず、こうしたコンパクトな民生品を利用していたそうだ。業務用機材の映像との質感の差を埋めるのに苦労したというから、映画館ではそのあたりを注目してみてはどうだろう。
映画の内容じたいはとても外国人が撮ったとは思えぬほど的確に日本の良さ、こだわりを伝えるもの。いかにすし職人というものが、厨房の裏側で地味な仕事を積み重ねているか。そしてその最高峰に立ちながらも、いまだ高みを目指す小野二郎。彼の生き様を謙虚に、そして尊敬の念をもって描いているのが手に取るように分かり、思わずこちらまで嬉しくなってくる。

■作品データ
二郎は鮨の夢を見る
2013年2月2日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ユーロスペースほか全国順次公開!
2011年/アメリカ/英語字幕/カラー/82分/HD 配給:トランスフォーマー 宣伝協力:フリーマン・オフィス

スタッフ
製作・監督・撮影:デヴィッド・ゲルブ
編集:ブランドン・ドリスコル=ルットリンガー
製作:ケヴィン・イワシナ/トム・ペレグリーニ

キャスト
小野二郎
小野禎一
小野隆士
山本益博





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