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激映画批評

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実体験ならではのリアリティ(65点)

 地味ながら意外といいモノ揃いなのが刑務所ものというべきジャンル。虐げられた女たちが団結して立ち上がるリンダ・ブレアの女囚ものからはじまって、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」といった真面目な冤罪もの、「アルカトラズからの脱出」あたりの脱獄ものまで、ある世代以上にとっては琴線に触れるテーマばかりではあるまいか。
「愛について、ある土曜日の面会室」(120分、仏)は、テクニカルな人間ドラマとしてそうした佳作群に加わるかもしれない一品。28歳の女流監督レア・フェネールの処女長編、若手&新人監督ということで少々不安が沸き立つものの、実際はそう思えないほどしっかりした演出なので心配はいらない。上映が始まった途端から、尋常ではない緊迫した空気に引き込まれることだろう。一般に監督が無名な場合、ファーストシーンにインパクトあるものを配置するのは演出の王道。一瞬でも気を抜けば気まぐれな観客の興味はどこかへ飛んで行ってしまうのだから、最初からつかみ続けることが肝要だ。
ストーリーは、主に3人のドラマで構成される。息子を殺された母親の話、知り合った彼氏が投獄されてしまうティーンエイジャーの物語、そして大金と引き換えに瓜二つの囚人との入れ替わりを依頼される平凡な男。
彼らは映画のラストで同じ日、同じ刑務所の面会室に集結し、互いの運命を絡ませることになる。そこに至るまでの各々の事情や背景、抱える思いを丁寧に描くことで盛り上げていく仕組みだ。
中途でややダレる印象はあるものの、それをカバーするほどの特長としてあげたいのが、刑務所関連のディテールにみられる高いリアリズム。見た目のみならずそこに集まる人々の心理、行動などまるで本物かと見まがうほどだ。
じつはこれ、作中のエピソードの数々が監督の実体験をもとにしているからに他ならない。とはいえ、レア・フェネール監督が極悪レディースでしょっちゅう監獄のお世話になっていたわけでは決してなく、刑務官側の手伝いとして3年ほど勤めていたという意味。
ほとんどの人にとって生涯無縁な刑務所という異世界。想像だけで描いてもボロは出にくいと思うが、そこで繰り広げられる人間心理をスリリングに見せるには、舞台装置に嘘がないほうがいいに決まっている。そして、少なくともこの点においてこの監督は実体験という、ベテランをも寄せ付けない武器を持っているというわけだ。


■作品データ
愛について、ある土曜日の面会室
Qu'un seul tienne et les autres suivront
2012年12月15日(土) シネスイッチ銀座 ほか全国順次ロードショー!
2009年/フランス/120分/35mm/1:1.85/ドルビーSRD 配給:ビターズ・エンド

スタッフ
監督・脚本:レア・フェネール

キャスト
ファリダ・ラフアド
レダ・カティブ
ポーリン・エティエンヌ




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