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激映画批評

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吉永小百合は言うまでもなく特別なスターだ。何が特別かって、映画の中で彼女だけは年齢を超越した扱いを受けている点が違う。「北のカナリアたち」(122分、日本)において彼女は、約60歳と40歳のヒロインを一人で演じているが、これは67歳という実年齢をスタッフの誰一人知らなかったか、あるいは考慮すらしていないとしか考えられない。
 とはいえ、ごく当たり前にそんな無茶振りを成立させてしまうあたりが、映画スターのオーラというやつなのだろう。私は彼女が、そのうち自分より年下の役を演じ始める日を楽しみに待っている。
 そんなサユリさんが今回演じるのは元小学校教師。彼女は20年前にある事件を起こして以来、教職と、職場だった北海道の離島を離れて暮らしている。ところが訪ねてきた警察に、かつての教え子(森山未來)が殺人容疑で追われていると聞かされ、いてもたってもいられず島へと向かうのだった。
 「告白」が映画化され大ヒットしたばかりの湊かなえ原案だが、実は原作ありきの企画ではない。もともと北海道を舞台に何かやれないかと考えて作成していた脚本が、たまたまこの原作に類似していたため、正式に原案協力を依頼したという流れだ。東映創立60周年の大作なので、ネームバリュー頼りでなく本当にいいものを、という気概が感じられる。
 離島の小学校でたった6人の教え子が成長して集い、かつて熱中した合唱をにかわに心を再び通わせる。そんな感動ものだが前述のミステリ要素もあり、吉永の清純派イメージをミスリードにさえ使う大胆な試みも。ただ、それらの意欲的な脚本内容がことごとく詰めが甘く大味なのが、60年たっても変わらぬ東映映画の魅力(?)か。
 ロケ地となった利尻島と礼文島は、悪天候で連絡船がしょっちゅう止まるため、スケジュールにうるさいテレビや映画の撮影隊が本格的に入ったことはこれまでないという。そんな希少性と、冬の北海道の、襲いかかるような自然の怖さをフィルムに焼け付けたのが木村大作カメラマンという点もポイント。「八甲田山」や「剣岳 点の記」などで知られる日本一の映像職人による重厚な絵作りは、確かに映画館で見るに値する。

■作品データ
北のカナリアたち
2012年11月3日(土・祝)公開
2012年/日本/カラー/122分/配給:東映

スタッフ
監督:阪本順治
原案:湊 かなえ 『往復書簡』(幻冬舎刊)〜「二十年後の宿題」より〜
脚本:那須真知子
撮影:木村大作
音楽:川井郁子

キャスト
吉永小百合
柴田恭兵
仲村トオル
森山未來
満島ひかり
勝地涼
宮崎あおい
小池栄子
松田龍平
里見浩太朗



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