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◆ユングとフロイトを惑わす危険な女(65点)

 一億総うつ時代とか総メンヘラなんて揶揄される、閉塞感あふれる現代日本。心理学や精神分析、さらにはオカルト・神秘主義まで手を伸ばす、迷える人々も少なくない。
夢判断のフロイトと、その弟子筋で連想テストを得意としたユングは、そうした多くの日本人にとって多少は興味ある人物だろう。とくに、これまで彼らの関係をおぼろげにしか知らなかった人たちにとって、「危険なメソッド」(99分、英ほか)はてっとり早く、そして楽しく偉大なる心理学者たちの生きざまをおさらいできるチャンスといえる。
舞台は1904年、精神科医ユング(マイケル・ファスベンダー)は信奉する精神分析の大家フロイト(ヴィゴ・モーテンセン)の談話療法を、患者ザビーナ(キーラ・ナイトレイ)に適用する。彼女の精神の奥深くにたやすく入り込んだユングは、ぬぐい難いトラウマを探り当てるのだが……。
このあらすじを読めば、どうせこの女は父親に性的虐待でもくらってて、それでおかしくなったんだろうと誰もが考える。それが「精神モノ」のマンネリワンパターンだからだ。
しかし本作は、そんな予想をかなり早い段階で裏切るばかりか、あのフロイトとユング、そしてザビーナの3人がきわめてスリリングな男女の関係にあったことを教えてくれる。
二人のファム・ファタールことザビーナを演じるキーラ・ナイトレイは、実在の本人が残したメモをもとに役作り。「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのヒロインで知られるあの美人が、ドン引きするほど醜く顔面をゆがませる様子はちょっとショックだが、病状が収まるにつれどんどん魅力的になってゆく。
そもそも、少々ぶっ飛んでるが高い洞察力と美貌を持つザビーナのような知的な女性はこの上なく男心をくすぐるもの。無神論者でガチガチに自らとその理論を防衛していたフロイトと違い、未知なるものに寛容で好奇心旺盛、恋愛についても純粋だったユングはあっという間に彼女に取り込まれ、溺れてゆく。時代は違えども、彼の運命に共感と同情を感じる男性は少なくないはずだ。
そんなわけで、地味になりがちな伝記映画化の割に退屈することはない。おまけにキーラ・ナイトレイの裸も存分に楽しめる。手ぐすね引いてあなたを狙うたくさんのザビーナがそこかしこにいる現代日本、偉大な先人が残してくれた「危険なメソッド」を使いこなすためにも、男なら護身の意味で見ておいて損のない一本だ。



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