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激映画批評

今月のオススメ


◆原作読者にすすめたい(60点)

 日本の漫画原作映画をウォッチしていると、「なんでこの漫画をいま映画にするんだ」と首をひねるものばかりだ。大ヒット中の「るろうに剣心」や「ひみつのアッコちゃん」もそうだし、もはや伝説と化した珍作「デビルマン」もしかり。何が何でもこの時代にコイツを映画化する必然性がある! という信念がないから、そのほとんどはろくでもない出来栄えで、いったい作り手が何をしたかったのかさっぱりわからない。
ジョージ秋山原作の「アシュラ」(75分、日本)がアニメ映画化されるときいて、私が最初に感じたのもそういった不安だった。なんで今、あの残虐トラウマ漫画をアニメにするのかぴんと来なかった。原作は70年に週刊マガジン連載開始だから、ファンは少なくとも40代以上の男性だ。ポケモンやプリキュアの洗礼を浴びてるような貧弱精神のいまどきボーイズに、母親に喰われそうになった赤ん坊の人肉食サバイバル劇を見せようというのか? それとも映画館を懐古趣味のオジサンで埋めようというのか。あるいは「よーしパパ、今日はおまえを映画につれてってやるぞ〜」というほのぼの父子にさらなるトラウマを与えようというのか?
……などと考えつつ見たわけだが、これがなかなか良かった。原作を評価するものとしては不満は多々あれど、今回採用されたハイブリッドアニメーションと呼ばれる「動く水墨画」は、ビジュアル的にすこぶる美しく、殺伐とした中にもわずかな希望が見えるアシュラの世界観にもぴたりとはまる。
未読者のため簡単に内容を書くと、舞台は中世の日本(映画版では応仁の乱の後との設定)、道には餓死者が積み重なり、アシュラの母親はその人肉を喰らいながら主人公であるアシュラを産む。「生まれてこないほうがよかった」この赤ん坊の、波瀾万丈な日々を描く衝撃のドラマだ。
愛を知らないアシュラは、幸福そうな家族を斧で殺害し、その肉を喰らい生きる。見た目は幼児ながらその目は人間の業を一手に引き受ける悲しみに満ちている。先の見えない彼の運命には、何が待ち受けるのか。
最大の不満は残虐描写が原作よりソフトで、結果的に作品の根源的テーマが伝わりにくくなったこと。ただし、そこを知る原作読者に対してならば、ジョージ秋山版の補完として大いに楽しめる作品になっている。とくにアニメ版のアシュラの魂の叫び(名セリフ)には、心をえぐられるほどの切なさを感じ、思わず涙が出る。これはハイブリッドアニメーションとプロ声優の演技による、アニメだからこそ持ちえた魅力、作品パワーといえる。

■作品データ
アシュラ
2012年9月29日(土)公開
2012年/日本/カラー/75分/配給:東映

スタッフ
原作:ジョージ秋山
監督:さとうけいいち
脚本:高橋郁子

キャスト(声の出演)
野沢雅子
北大路欣也
林原めぐみ
玄田哲章
平田広明
島田 敏
山像かおり



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