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激映画批評

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◆甘さのない男だらけのサバイバル(60点)

 37度などというとんでもない暑さを記録し、各地で熱中症の被害者が続出している。我慢もほどほどにしないと命にかかわる今日この頃だが、納涼代わりに映画を見るなら「THE GREY 凍える太陽」(117分、アメリカ)で決まり。
 舞台となるのはアラスカ山中で、最初から最後まで吹雪か豪雪しか出てこない。涼むどころか映画館を出て熱気にあたってほっとする、恐ろしいマイナス40度の極寒世界を舞台にしたサバイバルアクションだ。こいつをわざわざ真夏の8月に公開するとは、映画会社のいきな計らいというほかない。
 主人公は石油掘削現場を野生動物の襲来から守る射撃手(リーアム・ニーソン)。彼を含む労働者たちを乗せた飛行機が、アラスカの雪原に墜落することから物語は始まる。文明社会から隔絶された墜落現場で生存者数名は凍えながら暖をとるが、そこは野生のオオカミの縄張りだった……。
 武器なし、食料はわずか、通信手段なし、救助なし。どこかの原発事故現場も裸足で逃げ出す劣悪環境の中、家族と会いたい一心で男たちは立ち上がる。
 この手の話では、どこそこに行けば助かるとか何日耐えれば助けが来るとか、必ずしも明確ではないにしろある程度のゴールが見えていて、そこに向かってストーリーが進んでゆくのが普通。だがこの映画にはそれがない。オオカミが襲ってくるものだからとりあえず森に逃げろとか、川沿いに山小屋があるかもしれないとか、よく考えたら単なる希望的観測にすぎない目標に向かわざるを得ない男たちの姿が絶望を誘う。
 だが、男の人生とはこんなもの。吹雪の中、不十分な装備で、敵からの襲撃をかわし、ここぞというときに命がけで戦う。それでもダメなら潔く終わりを受け入れる。愛すべきオヤジどもが一人ひとり死んでいくのを見ても、悲しむより「俺もすぐに続くよ」との感情が沸き起こるのはそんなところに理由がある。
 無名役者をそろえて誰が生存するか予測しにくくしたそうだが、そんなことをせずとも、というより誰が生きるか死ぬかよりも見るべきものがこのドラマにはある。実際にマイナス20度の中で撮影したリアリティは、まさに私たちの生きる世界のそれを表している。
 オオカミに食われるほうがましと諦めるか、体力任せに進み続けるか、意を決して背後の敵と戦うか。男たちの選択は、それぞれの人生を描いたドラマそのものといえる。

■作品データ
HE GREY 凍える太陽
The Grey
2012年8月18日(土)、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!
2011年/アメリカ/カラー/117分/配給:ショウゲート

スタッフ
監督:ジョー・カーナハン (『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』『スモーキン・エース』)
製作:トニー・スコット、リドリー・スコット
撮影:マサノブ・タカヤナギ (『バベル』『消されたヘッドライン』)
原作:「Ghost walker」イーアン・マッケンジー・ジェファーズ
配給:ショウゲート
協力:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント

キャスト
リーアム・ニーソン (『96時間』『特攻野郎Aチー ム THE MOVIE』『アンノウン』)
ダーモット・マローニー (『ゾディアック』『アバウト・シュミット』)
ジェームズ・バッジ・デール (『ディパーテッド』)



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