トップページ激映画批評

激映画批評

今月のオススメ


◆沢尻エリカはなかなかよく頑張った(60点)

 商業映画を作るときには、多かれ少なかれ想定する客層や年齢層といったマーケティングを行うものだが、プロフェッショナルが綿密に調査したとしても、なぜかスカッと外れる時がある。
どうもそんなケースになりそうなのが沢尻エリカ主演最新作「ヘルタースケルター」。そもそもこの作品を沢尻主演作、と銘打つ時点で本来の客層である「若い女性」からずれている気がするのだが、蜷川実花監督最新作、と書いたところで本稿の「想定読者層」である紳士の皆様に届くとも思えず。じっさいこの作品についてマスコミから私のところに来る問い合わせはほとんど男性週刊誌からだし、あえて私は皆さんにこそ、この映画を紹介したいと考えている。
主人公は芸能界を登り詰めた女性タレントりりこ(沢尻エリカ)。だが彼女は、目玉と骨と耳とアソコ以外すべてといっても過言ではない全身整形手術を施した「元ブス」。後遺症により皮膚が崩れ始めたりりこは、トップスターの地位を失う恐怖や美しい後輩(水原希子)に追い上げられる焦りとの戦いで精神をズタボロに消耗しながら、それでも破滅への道を進んでゆく。
先日、芸能事務所イエローキャブの社長が自殺したと報じられたが、常に栄光と破滅が隣り合わせの芸能界を舞台に、死と再生のドラマを描いた本作はあまりにもタイムリー。ましてりりこを演じる沢尻は、現実でも奇行や薬物疑惑がささやかれるスキャンダルスターであり、情緒不安定ながら高いプライドが魅力的な本作の主人公とどこかイメージが重なる。舞台装置として、これ以上整った映画は稀だろう。
日々のストレスを、マネージャーカップルへのサディスティックな変態行為で解消しようとする過激シーンを、各媒体で報じられている通り全裸もいとわぬ体当たりで演じたその姿は、なるほど思い切ったなと評価するに十分。まだまだ演技力が追い付いておらず、世紀の熱演!と絶賛するには程遠いが、沢尻史上と限定すれば間違いなくナンバーワンの作品といえるだろう。
蜷川実花監督の原色使いなビジュアルセンスも楽しいし、沢尻の身体も抜群に綺麗だしと、気軽なスキャンダルドラマとして楽しむには十分な出来。女の執念とプライド、そしてうらはらな弱さを味わえるドラマとして、平均以上の面白さを兼ね備えている。

■作品データ
ヘルタースケルター
2012年7月14日(土)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
2012年/日本/カラー/127分/配給:アスミック・エース

スタッフ
監督:蜷川実花
脚本:金子ありさ
原作:「ヘルタースケルター」(祥伝社フィールコミックス)
音楽:上野耕路
製作:映画『ヘルタースケルター』製作委員会
制作プロダクション:アスミック・エース エンタテインメント、シネバザール
配給:アスミック・エース

キャスト
沢尻エリカ
大森南朋
寺島しのぶ
綾野剛
水原希子
新井浩文
鈴木杏(友情出演)
寺島進
哀川翔



ページの先頭へ戻る