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激映画批評

今月のオススメ


◆タイムリーかつ本格的な公安警察サスペンス(95点)
 在日中国大使館の1等書記官にスパイ疑惑が巻き起こっている。日本語はペラペラ、松下政経塾出身で東京大学の研究員の肩書も持ち、農水相はじめ政財界に太い人脈を持つ。その輝かしいプロフィールには思わず脱帽、きっと本人は(ジェームズ・ボンドを演じる)ダニエル・クレイグばりのスーパースパイかと思いきや、人のよさげなオッサン然とした風貌にホッとしたものの、それこそがリアルな諜報員の姿なのだろう。
 「外事警察 その男に騙されるな」(128分、日本)は、今まさに見る価値のある、日本発のスパイ映画。スパイとはいってもイケメン俳優がブルジュ・ハリファの外壁を駆け回る荒唐無稽なアクションではない。ドブ板と称される地道な対テロ捜査や協力者獲得作戦をディテール豊かに描いた本格的なポリティカルサスペンスだ。NHKのドラマ版から発展した映画化となるが、独立して楽しめる脚本となっているので未見の方も問題ない。
 舞台は2011年の日本。東日本大震災で壊滅した東北の大学研究室から、原子力関連の最新技術を記録したハードディスクが盗まれる。警視庁公安部の外事四課は、これを核テロの準備行為の疑いが濃厚と判断。公安の魔物といわれる百戦錬磨の住本(渡部篤郎)をリーダーに捜査を開始。まずは工作員と思しき貿易会社社長の日本人妻(真木よう子)を協力者として獲得すべく情報収集を開始する。
 原案は名著「宣戦布告」を書いた麻生幾。取材の鬼たる彼の小説同様、映画版も本物の外事警察官の監修のもと、原子力関連メーカーなどへの取材によって恐るべきリアリティを実現。そこに丁寧な色調整や照明、ブリーチバイパス等の味付けをした重厚な映像と、韓国ロケおよび実銃使用の銃撃戦といった本物感あふれる演出が加わり、大人向け政治エンターテイメントとしては無敵の完成度に仕上がっている。
 脚本、キャラクター造形にも抜かりはなく、協力者となる真木よう子はじめ演技者のパフォーマンスも上々。本年度の邦画サスペンスでこれを超えるものはおそらく出ない、それほどの傑作となっている。国際政治、警察、公安、国家的な危機管理、そうしたものに興味ある人が見たら、日本映画もついにここまで来たかと驚く事間違いなし。この手のジャンルはハリウッド映画の独壇場だが、本作はその水準すら軽く超えている。
 GWが終わり、映画館から子供たちがいなくなった今、大人の皆さんは満を持して本作を見に行ってほしい。見ごたえたっぷりで、大きな満足を得られることを保証する。

■作品データ
外事警察 その男に騙されるな
2012年6月2日(土)より、全国ロードショー
2012年/日本/カラー/128分/配給:東映/S・D・P

スタッフ
監督:堀切園健太郎
原案:麻生幾「外事警察」
脚本:古沢良太
音楽:梅林茂
プロデューサー:訓覇圭、岩倉達哉
製作:「外事警察」製作委員会
配給:東映/S・D・P

キャスト
渡部篤郎
キム・ガンウ
真木よう子
尾野真千子
田中泯
イム・ヒョンジュン
北見敏之
滝藤賢一
渋川清彦
山本浩司





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