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激映画批評

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◆成功者の人生から、時代のダイナミズムを感じ取れる(60点)

 ヘアケア用品のブランドとしても有名な世界的ヘアドレッサーのヴィダル・サスーン氏が、そのドキュメンタリー映画の日本公開(26日〜)直前となる9日、84歳で亡くなった。
 私がこの映画を見たのはその死去直前だったが、あまりの偶然に驚いたものだ。なにしろ映画の内容は、孤児院出身の彼が輝かしい成功をつかむまでを網羅した、まさに人生の集大成というべきもの。いかに白血病を患っていたとはいえ、まるで最後の仕事を予感させるように出ずっぱりで自らを語る姿には、成功者ならではの強烈な直感の発現を見るかのようだ。
 内容はサスーン本人を中心に、家族や周辺へのインタビューをまとめた正統派。本人全面協力のドキュメンタリーということで、暴露系のセンセーショナルな内容ではない。
 とはいえ、サスーンカットなどと称されるその超絶テクニック、業界を驚かせた数々のアイデアによる実績には改めて驚かされる限り。現在でも女の子に大人気のストレートボブが、まさか戦中派ユダヤ人である彼の考案だったとは、渋谷のギャルには想像もつくまい。
 個人的に感心したのは、若いころ開業した彼のサロンの美容師が、みなダークスーツに身を固めて仕事をしている点。この時代の他の美容院がどうだったのかは知らないが、カジュアルなお兄ちゃんお姉ちゃんばかりの現代日本のそれとはだいぶ様相が異なる。なにしろ靴を磨かずに出勤した者にはクビを言い渡したというくらいだから、彼の美とTPOへの並々ならぬこだわりを感じざるを得ない。
 このほかにも労働時間に対する考え方などを聞いていると、単純ながら有無を言わせぬプロの心構えのようなものを感じられる。ファッション、美容業界とは無縁のビジネスマンにとっても、これだけ成功を収めた大ベテランの言葉からは、いくつかのヒントを得られると思う。
 そうした大人の社会人、美容に興味ある人、成功譚が好きな人にはとくにすすめたい。時代の波に乗る痛快さと、激動と呼ぶにふさわしい時代のダイナミズムそのものを感じられる作品に仕上がっている。

■作品データ
ヴィダル・サスーン
VIDAL SASSOON: THE MOVIE
2012年5月26日(土)より渋谷アップリンク、
銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館ほか、全国順次公開
2010年/アメリカ/カラー/90分/配給:アップリンク

スタッフ
監督:クレイグ・ティパー
プロデューサー:マイケル・ゴードン、ジャッキー・ギルバート・バウアー
アートディレクター:スティーヴ・ハイエット
脚本:へザー・ゴードン

キャスト
ヴィダル・サスーン
マリー・クワント
グレイス・コディントン




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