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激映画批評

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◆日本にはない教育システム(60点)

 日本になくてアメリカにあるもので羨ましいものといえば、ダイナーで食べられる安くてうまい朝食と、社会人からでも気軽に入れる公立大学だ。人によってはここに金髪碧眼の美人が追加されたり、むしろそれを第一に持ってこないとは何事だなどとクレームが入るかもしれないが、今回はとりあえず「社会人でも入れる公立大学」と、それを扱った映画「幸せの教室」(98分、米)を紹介したい。
 米映画界の重鎮トム・ハンクスが、監督・製作から脚本・主演と八面六臂の活躍で作り上げた学園ドラマ。といってもティーン向けではなく中高年向けという、かなり異色のコンセプトを持つ。
 ハンクス演じる主人公はリストラされた高卒社会人で、再就職のためにとコミュニティ・カレッジ(CC)に入学する。このCCこそが本作のメイン舞台で、日本にはない「再出発を目指す社会人が学歴強化のため入学する」アメリカらしい風景を見ることができる。
 まず、これは一種の社会福祉というかセーフティーネットであることが、本作を見るとよくわかる。リストラされた際の精神的重荷のようなものも、キャンバスで同じ境遇の人と出会ったり、元気のいい若者学生と同じ教室で交流したりすることで緩和される。人は新しい価値観と出会うことで、前に進む気力を与えられる。その、当たり前だが忘れがちな「上手に生きるコツ」が、がこの映画では魅力たっぷりに描かれている。
 むろん、それだけであの国の構造的失業問題は何も解決しないし、日本その他の国でも同じだ。しかし、少なくとも自分の国にない生き方を知ることができるということが、外国映画を見る醍醐味であることは間違いない。そこからは、必ずなにか得られるものがあるはずだ。
 CCが優れているのは、数週間のプログラムを失業中、転職活動中に受けてスキルアップするとか、あるいは短大のように2年間のフルタイムプログラムで学歴強化を狙うなど、学生の立場に合わせてフレキシブルにカリキュラムを選べる点。公立学校でこうしたいたれりつくせりがあるというのは、素直に羨ましい。
 アメリカでは中高年にバカウケしたという本作。CCほどではないが、「新しい価値観」を味わうのにはピッタリではあるまいか。

■作品データ
幸せの教室
Larry Crowne
2012年5/11(金)、TOHOシネマズスカラ座ほか全国ロードショー
2011年アメリカ映画/ 1時間38分/ドルビーSRD/シネスコサイズ 配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

スタッフ
監督:トム・ハンクス
製作:トム・ハンクス、ゲイリー・ゴーツマン
製作総指揮:フィリップ・ルースロ、スティーブ・シェアシアン、ジェブ・ブロディ、ファブリス・ジャンフェルミ、デビッド・コートスワース
脚本:トム・ハンクス、ニア・バルダロス
美術:ビクター・ケンプスター
編集:アラン・コディ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

キャスト
トム・ハンクス
ジュリア・ロバーツ
ブライアン・クランストン
セドリック・ジ・エンターテイナー
タラジ・P・ヘンソン
ググ・バサ=ロー
ウィルマー・バルデラマ
パム・グリア



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