トップページ激映画批評

激映画批評

今月のオススメ


◆古きよきものを見直そう(75点)

 古いものには価値があるとよく言われる。それも中途半端な古さではだめで、どうせなら目いっぱい昔のほうが面白い。10年落ちではただの中古車だが、80年前のものならクラシックカーとして博物館に展示される、そういうことだ。
「アーティスト」(100分、フランス)の企画者がそんな発想を持ち合わせていたかは不明だが、モノクロサイレント映画の再現という本作のコンセプトは結果的に結果的に大成功。アカデミー賞主要5部門独占は、これ以上ない大成果といえるだろう。
舞台はおよそ80年前のハリウッド。サイレントからトーキーへの移行期にあたるこのころ、大スターのジョージ(ジャン・デュジャルダン)はその波に乗り遅れてしまう。やることなすこと裏目に出て落ちぶれる彼を尻目に、新人女優のペピー(ベレニス・ベジョ)はトーキーのアイドルとして出世街道を上り詰める。
この映画自体が、古きよきものを愛する視点から作られているから、その象徴たる主人公ジョージも決して悲劇にまっしぐらとはならない。無名時代に優しく接してくれたジョージに恩と憧れを感じ続けていたペピーは、なんとか彼の持ち味をトーキーのファンに伝えるすべはないかと考え続ける。この二人の素朴な愛が、穏やかな音楽とダンス、コミカルな見せ場を交互に行き来しつつ、心地よい川の流れのように展開する。
言葉などなくとも、視線の動きや表情をみれば思いは伝わる。電話からネットへと、言葉や文字のコミュニケーションばかりになった現代において、このアプローチは忘れられていた「古きよきもの」そのものだ。そんな本作品が各国およびアカデミー会員に絶賛されたのも当然といえるだろう。
こういう良質な作品を、たまには愛する奥さん(10年もの)と出かけてみてはどうだろうか。なお車や映画と違って古女房の場合は、何十年たってもプレミア価格がつくことは多分ない。

■作品データ
アーティスト(原題)
The Artist
2011年/フランス/100分 配給:ギャガ

監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシス

出演:
ジャン・デュジャルダン
ベレニス・ベジョ
ジョン・グッドマン
ジェームズ・クロムウェル

 



ページの先頭へ戻る