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激映画批評

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マネーボール

◆野球映画に外れなし(70点)

 野球は日本人にとっての国民的スポーツだ。タクシードライバーの研修では真っ先に「お客とは、絶対に野球と政治の話はするな」と教えられるが、多くの運転手がこっぴどい目にあってきたということだろう。それだけ、野球には一家言あるオヤジが多いという意味でもある。

 だから映画業界関係者は、野球映画に求められるハードルがきわめて高いと自覚すべき。なのにアイドルを主演にしょぼい試合シーンの駄作を作ってしまうのがこの国の映画界のダメなところだ。

 その点、同じくベースボールを国技とするアメリカの映画界はよくわかっている。ハリウッドの野球映画の質は常に高い。実在のゼネラルマネージャーの奮闘を描いた「マネーボール」(133分、アメリカ)はその最新作で、野球映画に外れなし、との格言や健在と思わせる面白さだ。

 主人公ビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、オークランド・アスレチックスのGMを務めた男だが、彼はマネーボール理論というデータ野球の信奉者として知られている。映画はビーンがこのビンボー球団を大胆なトレードと選手起用で立て直し、スター選手揃いのヤンキース相手に大奮闘を見せた実話を映画化したもの。

 Facebook 創設者の伝記映画「ソーシャル・ネットワーク」(2010)のスタッフの手による作品で、ビジネス映画の側面が強く、野球映画ながら試合場面は脇役。球団フロントの舞台裏と、斬新なデータ理論が成果を上げていく経営者的快感を味わえる異色の「野球ビジネス」ムービーだ。

 日本の野球ファンは、たいていオーナーか監督気分で選手起用だの戦術だのにあれこれ難癖つけながら楽しむのがデフォルトなので、こうした映画はぴったり。そもそもマネーボール理論とは、華やかな本塁打や打率ではなく、地味な四球や出塁率を重視する当時のメジャーリーグとしては画期的な手法。ここまで書けば分かるように、これは要するに伝統的な「日本野球」そのものだ。マッチョ主義のアメリカ野球の時代遅れっぷりは、いまごろこんな映画を作っていることでもよくわかるが、WBCで日本に完敗してようやく彼らも反省したというわけだ。

 ……と、さすがにそれは身びいきな勝手理論だが、野球ファンなんてのはこんな面倒くさい高飛車オヤジがほとんど(私を含むことは否定しない)。タクシードライバーが、こりゃ必死になって話題を避けるわけだ。

 

■作品データ
マネーボール
Moneyball
2011年11月11日(金)より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!
2011年/アメリカ/カラー/133分/配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

スタッフ
原作:マイケル・ルイス
監督:ベネット・ミラー
脚本:スティーヴン・ザイリアン、アーロン・ソーキン

キャスト
ブラッド・ピット
ジョナ・ヒル
ロビン・ライト
フィリップ・シーモア・ホフマン
クリス・プラット
キャスリン・モリス
グレン・モーシャワー
ケリス・ドーシー



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