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ラルゴ・ウィンチ 裏切りと陰謀

◆資本主義から攻撃を受ける主人公(60点))

 バブル世代を経験した人たちは、アクション映画が好きな人が多い。なにしろ80年代のアメリカ映画はそうした娯楽作の全盛期。「ダイ・ハード」も「ランボー」もいまだに新作が作られているほどで、現在までその影響は続いている。逆に言えばそれら過去の遺産を食いつぶすほどに現在のハリウッドが苦しいとも取れるわけだが、本家が頭打ちならばいっそ他国のアクション映画を味わってみてはどうか。

 そこですすめたいのが「ラルゴ・ウィンチ 裏切りと陰謀」(119分、仏・ベルギー・独)。アメコミ欧州版ことバンド・デシネのベストセラーを映画化したもので、ハリウッド顔負けのハードなアクションが売りのエンターテイメントだ。

 誰もが爆笑するのが主人公ラルゴ(トメル・シスレー)の設定。この若きイケメンはアジアを冒険旅行して回っている。パッと見、バックパッカーのごとき風貌だが、あるとき父が暗殺されその莫大な遺産と企業グループを相続。世界最高の金持ちになってしまう。しかも即座にそれらを売却、慈善事業に寄付するなどと言い出す。

 資産530億ドルのスーパーヒーローとはバットマンも顔負け。530億ドルといえば現実ならばマクドナルド社を上回り、AppleやIBMの企業価値にも匹敵する桁違いの金額。それを平然と捨ててしまうのだから、ヒーロー映画史上最強の肝っ玉といえる。ここまでくれば笑うしかない。

 だが、これほどデカい金が寄付されるなど前代未聞で、世界経済の秩序をすら破壊する。だから彼はあらゆる方面から猛反発を受け、そして命を狙われる。ブラックマネー疑惑を突き付けられ、当局からも追われる。まさに四面楚歌。頼れるのは父がひそかにため込んでいたいわゆる機密費だけ。それでも数十億円規模あるので、逃亡費としちゃ使い放題だ。

 そんなわけで、贅沢なアクションシーンが続々と出てくる。カーチェイスでは高級車が舞い上がるし、スカイダイビング中に銃撃戦、なんてものもある。しかもそれらはCGではなく、スタントマンさえ使わず主演のトメル・シスレー自身が演じている。一般にスカイダイビングの撮影は極めて難しく、短時間しか行えないため彼はなんと計111回もダイブしたそうだ。時速300キロメートルの急降下場面に迫力があるのは、彼の表情がしっかり画面に映っているからだ。

 アクション作品ながら欧州の映画らしく随所にエスプリが効いているのもいい。資本主義の終焉が叫ばれる現在、その常識では測れぬ行動をとる主人公を攻撃する勢力はまさに資本主義自身、とくにその強欲な悪しき側面そのもの。そんなあたりが、大人の鑑賞にも堪えるテーマ性といえる。

 

■作品データ
ラルゴ・ウィンチ 裏切りと陰謀
LARGO WINCHU/ The Burma Conspiracy
2011年10月29日(土)より銀座シネパトス他にてロードショー
2011年/フランス=ベルギー=ドイツ合作/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル・DTS/1時間58分 配給:コムストック・グループ、クロックワークス

スタッフ
監督:ジェローム・サル
脚本:ジュリアン・ラプノー、ジェローム・サル
撮影:ドゥニ・ルーダン
編集:スタン・コレ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
オリジナル・サウンドトラック:ランブリング・レコーズ

キャスト
トメル・シスレー
シャロン・ストーン
ウルリッヒ・トゥクール
ローラン・テルジェフ



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