トップページ激映画批評

激映画批評

今月のオススメ


モンスターズ/地球外生命体

◆製作費130万円ながら本格派SF(65点)

  映画というのは面白いもので、製作費150億円をつぎこんだ「トランスフォーマー」の最新作と、たった130万円で作ったこの「モンスターズ/地球外生命体」が、まったく同一の入場料金で、しかもほとんど同時期に公開されたりする。おまけに内容も、迷惑な宇宙人が地球に攻めてきて、米軍が必死に防戦する、まるっきり同じプロットときた。つまり、同じ話を千倍以上の金をかけて作っているというわけだ。そして当然ながら、わざわざ130万円の方を好んでみる人たちも少なからずいる。この現象を面白いといわず、なんと言い表せばいいというのだろう。

 NASAが太陽系から持ち帰ってきた地球外生命体のサンプルが、大気圏突入時に宇宙船ごと爆発してしまう。その数年後、真下にあったメキシコでは凶暴巨大な宇宙生物が繁殖。映画は全域が警戒区域となったこの国で、アメリカとの国境を目指す男女の逃避行を描く。

 派手な導入部となりそうな探査機の爆発シーンはない。低予算(というよりほとんどゼロ予算)映画らしく、真っ黒画面にテロップとナレーションで済ましてしまう。だが何もガレス・エドワーズ監督は、決してこのシーンを描くのが面倒だったわけではない。彼はVFXの名手であり、限られた予算はここぞという見せ場に爆発的につぎ込まれている。ちゃんと巨大生物と軍隊の戦いもでてくるし、逃げ込んだ屋内に触手が伸びてくる不気味で怪獣映画的なスリルもしっかりと見せてくれる。「130万円」で作った映画としては、ありえないほどのスケール感といえるだろう。

 撮影はメキシコロケで行われ、エキストラはそのへんにいる現地住民を集めてお願いした。カネはなくとも、交渉能力は極めて高いスタッフ一同といえる。宇宙生物に蹂躙されたとしか思えない破壊された家屋なども、どこから見つけてきたのか、あるいはメキシコ郊外にはそこらじゅうに存在するのか堂々とフィルムに収められ、本格的な終末世界観を構築している。先進国で撮影したらこういう絵はまずとれまい。

 普遍的、哲学的、そして社会的なテーマが暗喩され、観客それぞれの現実とリンクさせる大人向けな作り。たとえば日本人がみたら、宇宙人襲来によってすべての日常が変化した「その後」の世界からは、原発事故後の我が国のいまと未来を感じてしまうだろう。秀逸なSFはこうした楽しみ方ができる。たんなる低予算映画ではない、だからこそハリウッドでも高評価を受けた一品だ。

 

■作品データ
モンスターズ/地球外生命体
2011年7月23日(土)よりシアターN渋谷他にて全国ロードショー
2010年/イギリス/94分/カラー/ドルビーデジタル/シネマスコープ/配給:クロックワークス

スタッフ
監督・脚本:ガレス・エドワーズ

キャスト
ホイットニー・エイ
スクート・マクネアリー



ページの先頭へ戻る