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コクリコ坂から

◆団塊世代専用ノスタルジック恋愛ドラマ(40点)

  息子の描いた絵や作った工作を見るのは、父親にとって格別だろう。出来の良しあしなんて関係ない、ただただ頬が緩むのが親心というもの。だが、父子ともにトップを目指すならば決して甘い顔はできない。わが子を谷に突き落とすライオンのごとく、厳しくなければならない。

 天才・宮ア駿もそうなのか、長男の宮崎吾朗が初監督した「ゲド戦記」(06年、日)の初号試射で、謎の途中退場をした話は有名。あれから5年、息子は監督第2作目に「コクリコ坂から」を選んだ。中学生時代、父に連れられ訪れた山小屋で読んだ「なかよし」に連載されていた少女マンガを原作に、内容を大胆にアレンジしたジブリアニメ最新作だ。

 舞台は1963年の横浜、ある下宿屋。ヒロインは父親の死後、ひとりで6人の大所帯をきりもりする高校二年生、松崎海(声:長澤まさみ)。いま学校では、文化部の老朽化したクラブハウスを立て直したい学校側と、愛着ある古い建物の存続を願う一部生徒側でちょっとした紛争になっている。生徒側の首謀者である新聞部部長と知り合い、惹かれはじめた海は、クラブハウス存続のため積極的に関わるようになるが、彼らの間には海の知らない衝撃の秘密があった。

 学園紛争の最中、惹かれあう硬派な男女。いかにも団塊世代が好みそうなモチーフであり、じっさい本作はノスタルジックな恋愛ドラマだ。出てくる連中はきれいごとを絵に描いたような類型的なキャラクターばかりで、予定調和を崩さぬドラマを展開する。これをジブリのマンネリと見るか、安心感と見るかは観客次第だ。

 宮崎吾朗監督の演出はこれといった特色がなく、脚本と企画を担当した父親・宮ア駿の影響が中途半端に感じられる。オヤジのパワーが息子の個性を抑え付けてる結果になっていることは間違いあるまい。これもある意味親バカか。

 とはいえ、本作の試写では宮ア駿は途中退場することなく、ちゃんと最後まで見てそれなりに満足したというのだから、息子の成長は認めたということなのだろう。そんな父子関係が色濃く出た企画であること、団塊世代専用というべき舞台設定など、ジブリ作品としては珍しくオジサン向けであることは確かといえる。

 

■作品データ
コクリコ坂から
2011年7月16日(土)より、全国東宝系ロードショー
2011年/日本/カラー/91分/配給:東宝

スタッフ
企画:宮崎 駿
原作:高橋千鶴・佐山哲郎(角川書店刊)
監督:宮崎吾朗
脚本:宮崎 駿・丹羽圭子
プロデューサー:鈴木敏夫
音楽:武部聡志(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
主題歌:手嶌 葵「さよならの夏〜コクリコ坂から〜」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
挿入歌:坂本 九「上を向いて歩こう」(EMIミュージック・ジャパン)

キャスト
松崎海(主人公・16歳の少女):長澤まさみ
風間俊(17歳の少年):岡田准一(V6)
松崎花(海の祖母):竹下景子
北斗(コクリコ荘に下宿する研修医):石田ゆり子
松崎良子(海の母):風吹ジュン
小野寺善雄(海と俊の両親の大切な旧友):内藤剛志
水沼史郎(俊の親友):風間俊介
風間(俊の父):大森南朋
徳丸社長:香川照之



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