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プリンセス トヨトミ

◆きっと騙される、歴史妄想劇(70点)

 暗殺計画のあとウサマ・ビンラディンの自宅を捜索したら、大量破壊兵器ならぬ大量のおげれつビデオが見つかったという。鬼の首を取ったかのように全世界にトップニュースで伝えるアメリカ政府の鬼畜ぶりに、さすがに全男たちからも声なき非難があがっているようだ。

 この貴重な事案から私たちは、せめて残された家族を(情けなくて)泣かせないようなものを残すべきだと学ぶことができる。そして、そのテーマを真正面から描いているのが「プリンセス トヨトミ」(119分、日本)だ。

 舞台は現代の大阪。あるときこの大都市が、何の前触れもなくすべての機能を停止してしまう。町から人がいなくなり、くいだおれ人形や、かに道楽の巨大看板だけが延々と動いている。東京からやってきた会計検査院の調査官、鳥居忠子(綾瀬はるか)は激しく狼狽し、無人の街を一人さまよう。はたして大阪に何が起きたのか?

 あの小うるさい大阪の街が無人になる。この衝撃的なビジュアルのオープニングから始まるこの映画は、すぐにその謎を解き明かすべく数日前の過去に戻る。それが本編のメインドラマとなる。

 主人公は3人の調査官。天然キャラの鳥居忠子とその同僚、イケメンの優等生・旭ゲンズブール(岡田将生)、そして彼らの上司で鬼の松平の異名をとる松平元(堤真一)。どこかユーモラスな凸凹トリオのやりとりが楽しい、穏やかなコメディーをまずは楽しめる。

 彼らが会計調査に入るある古めかしいビル、ここにすべての謎の答えがあるのだが、そのあたりの展開はテンポがよく、3人の役者の個性もよく生かされ退屈しない。どう考えても本筋と無関係な、地元中学生の性同一性障害の物語なども挿入されるが、本筋とのあまりのギャップがまた知的好奇心を刺激する。いったいこれらの話がどうつながっていくのか?

 ここから先はネタバレになりそうなのであまり詳しく語れないが、端的にいうとタイトル通り、豊臣の末裔が現在でも生存しており、それを守り続けてきた男たちの物語となっている。歴史好きにはたまらない妄想劇だが、そのスケール、突飛さは相当なもの。

 そして、そこで描かれる主張を一言でいうと、「父が息子に残すもの」となる。豊臣のプリンセスを守るという、いっけんメインの物語がじつは単なる脇筋で、本当はこのテーマを描きたかったのだとわかるクライマックスで、息子を持つ父親はきっと涙するだろう。

 あらゆる意味で予想を裏切られた、なかなかの佳作。歴史ミステリーかなと思いつつ、気軽な気持ちで見る事をすすめたい。

 

■作品データ
プリンセス トヨトミ
2011年5月28日より公開 全国東宝系
2011年/日本/カラー/1時間59分/配給:東宝

スタッフ
原作:万城目学「プリンセス・トヨトミ」(文藝春秋社刊)
監督:鈴木雅之
製作:フジテレビ・関西テレビ・東宝

キャスト
松平元:堤真一
鳥居忠子:綾瀬はるか
旭ゲーンズブール:岡田将生
橋場茶子:沢木ルカ
真田大輔:森永悠希
真田竹子:和久井映見
真田幸一:中井貴一



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