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トゥルー・グリット

◆ジョン・ウェイン西部劇をいま作るとどうなるか(70点)

 私が名刺を出すと、その肩書きを見て「最近、映画観てないんだよね」とあいさつ代わりに照れ笑いする中年男性は結構多い。そのたび思うのは、忙しい彼らがわざわざ映画館に行きたくなる企画とはなんだろうという事だ。

 名作のリメイクはその一つの解答だと思うが、ジョン・ウェイン西部劇のリメイクとは、ありそうでなかったアイデアではなかろうか。本国のみならずこの日本でも、アメリカの代名詞的スターの鷹揚な魅力をこよなく愛したファンは少なくない。「トゥルー・グリット」(アメリカ、110分)は、そんなジョン・ウェイン代表作の一つ「勇気ある追跡」(69年)と同一原作の再映画化。監督はオスカーやカンヌ映画祭の常連、実力派コーエン兄弟だ。

 むろん、"デューク"の代わりはいるはずもないが、ウェインが体現した「古き良きアメリカ」を現代屈指の名監督がどう表現するかは興味深いのではあるまいか。なんといっても、アメリカはこの数十年であまりにも変わってしまった。いいものをたくさん失ったように私には思えるが、本作の作り手はどう感じているのか。

 西部開拓時代のアメリカ、オクラホマ州境。14歳の少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)は、牧場主の父親を惨殺した逃亡犯を追跡、復讐するため保安官のルースター(ジェフ・ブリッジス)を雇う。大酒のみだが誰よりも勇気があると評判の男だ。やがて若きテキサスレンジャー(マット・デイモン)も加わり、3人は過酷な冬の旅を続けるが……。

 何の変哲もない復讐物語だが、奇をてらわぬ堂々たる西部劇というのもたまには悪くない。雄大な西部の大自然を馬でゆく。徐々に旅は終わりに近づき、激しい撃ち合いのクライマックスが訪れる。古のアメリカ映画の味わいを再現したこのリメイクは、米国の観客からは圧倒的な支持を得た。

 もっとも牧歌的なジョン・ウェイン版と違い、キャラクターたちをどこか突き放した距離感で描くあたりにはコーエン兄弟の持ち味がよく出ている。14歳の少女と飲んだくれ保安官も、オリジナルの疑似父子関係ではなく、「対等な人間同士」としての友情を築いてゆく。ちょいと変更されたラストにそれは如実に表れている。そこに、わずかながら本作が2011年の映画である主張が感じられ、これまた興味深い。

 

■作品データ
トゥルー・グリット
TRUE GRIT
2011年3月 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
2010年/アメリカ/カラー/110分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

スタッフ
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
製作:スコット・ルーディン、イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、ロバート・グラフ、デヴィッド・エリソン、ポール・シュウェイク、ミーガン・エリソン
原作:チャールズ・ポーティス
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
撮影:ロジャー・ディーキンス
プロダクションデザイン:ジェス・ゴンコール
衣装デザイン:メアリー・ゾフレス
編集:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
音楽:カーター・バーウェル

キャスト
ジェフ・ブリッジス
マット・デイモン
ジョシュ・ブローリン
バリー・ペッパー
ほか



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