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10億円稼ぐ

◆テリー伊藤が本気で10億円を稼ぐチャレンジ(70点)

 10億円稼ぐ、とはじつに絶妙なタイトルだ。サラリーマンの生涯年収は2億から3億円程度だから、1億円稼ぐ、では(そりゃ大金には違いないが)ちょっとみみっちい。かといって100億円稼ぐ、ではあまりにも非現実的。その点10億円ならば、フツーじゃ一生稼げないが、一発当てりゃもしかしたら……の世界。映画を観る前から興味をひかれる。このあたりに、本作の監督で企画者でもあるテリー伊藤の見事なバランス感覚を感じ取れる。

 この映画の企画は彼が、映画監督をやってみたいと思ったその時から始まった。アダルトビデオの企画からテレビ番組の放送作家、そしてテレビタレントと、硬軟さまざまなシーンで活躍するこのアイデアマンは、「リアルタイム金儲けチャレンジ」のドキュメンタリー企画を、最終的に自身の初監督作に選んだ。

 まるでバラエティ番組のいちコーナーのようだが、これがなかなか本格的。2年以上もの月日をかけて、本気で彼が「10億円」稼ぐために行った挑戦の一部始終を収めてある。

 テリー伊藤はまず「キャラクタービジネス」に商機があると考え、オリジナルキャラクターを作成、各企業に売り込んでゆく。確かにサンリオのキティちゃんは労働者からセレブまで、あらゆる人々が身に着ける。この業界で万が一にも一山当てたら、その利益は無限大だ。

 最初は自身のヴィンテージ古着やオートバイを売り払っての軍資金づくり。その後、mixiでデザイナーを探して面接。彼らとともに作り上げた「ナニティ」なるキャラクターを、avex(……の、ちょっと売れてない)タレントの女の子たちを集めて世界中に広めてゆく。

 こんなふざけた思いつきのようなやり方が、ビジネスの世界で通用するかと思うだろうがさにあらず。テリーと女の子たちは、世間知らず業界知らずで何度も壁にぶち当たるが、その都度、意外とまともな反省・成長をして、それなりに乗り越えてゆく。

 この「10億円稼ぐ」について、私はてっきり「楽して儲けよう」式の芸能人の悪ふざけ程度の内容かと想像していたがそれは違った。商売の厳しさに打ちのめされながらも、必死にキーマンを探して売り込んでいく地道な頑張りを見るにつれ、私はやがて胸を打たれた。彼女らの姿に、独立したばかりの頃の未熟だった自分を見た気がしたからだ。

 彼ら、彼女たちはたしかにバカかもしれないし、無謀かもしれない。だが、時にはそんな「バカの一念」が道を切り開くこともある。感動的な結末からは、日常に忙殺されいつしか忘れかけていた大切な何かを思い出すことができるだろう。「金儲け」のみならず仕事というものについて、重要なヒントを与えてくれる、予想外の良作であった。

ちなみにそれら多くのヒントを見事に読み取り吸収しきった現在の私であるが、収入は相変わらず右肩下がりである。


■作品データ
10億円稼ぐ
2010年11月20日より渋谷シネクイントにてロードショー
2010年/日本/カラー/1時間39分/配給:エイベックス・エンタテインメント

スタッフ
企画・プロデュース・監督:テリー伊藤
制作会社:株式会社ロコモーション
配給:エイベックス・エンタテインメント

キャスト
テリー伊藤
NIGO
ラッキー池田
ほか



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