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激映画批評

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超強台風

◆珍しい中国製パニック映画(60点)

 ディザスタームービーといえば、何といってもハリウッドの独壇場。ノアの洪水の現代版「2012」(09年、米)や同じ監督による地球温暖化大災害「デイ・アフター・トゥモロー」(04年、米)、はたまた隕石衝突による地球崩壊「ディープ・インパクト」(98年、米)など、どれも派手な映像と感動ドラマの満艦飾だ。こういう超大作は、これまで他の国では作れなかった。

 ところがここへきて、好調な経済の賜物かアジアでも同類の作品が立て続けに登場してきた。韓国映画史上まれにみる大作で、津波の被害を描いた「TSUNAMI-ツナミ-」(09年、韓国)、嵐の中炎上する天然ガスプラントを舞台にした救助劇「THE LAST MESSAGE 海猿」(10年、日本)などがそれだ。そして中でももっともユニークなのが、「海猿」同様、台風を「主役」に据えた中国の災害パニック映画「超強台風」(中国/94分)。

 中国沿岸部を未曽有の強さを誇る台風が直撃。逃げ惑う人々と、市長(ウー・ガン)の孤軍奮闘ぶりを描く災害ドラマだ。

 先に挙げたアジア製の災害映画は、どれも各国の特徴がよく出ており、ハリウッドのものとは一味違う。アメリカ製は良くも悪くも大味で、適当に塩味で焼いたステーキのようなつくり。肉の分厚さだけが売り物で、細かい味わいは期待できない。しかしアジア製のものは、米国製にはないこってりした人情を中心にすえたドラマ性の高さで、映像のチープさをカバーする。もっともチープといえど最近のCG技術の進歩は目覚ましく、素人目にはハリウッドと大差ない。日本人がみると、案外アジアもののほうがしっくりくるのではないかと私は思う。

 とくにこの「超強台風」は、まるで香港B級映画のような滑稽なやりとりや、熱すぎる演技、大げさ演出など、感動ドラマかギャグ映画なのか、線引きがきわめて難しい位置づけ。中でも主人公の市長の超人ぶりはすごすぎて笑える。

 「オレのシマで勝手はさせない」とヤクザばりに言い放ち、数百万人をいち早く避難させたかと思えば、津波で立ち往生する住民のもとへ単身乗り込み、自ら飛び込んで救助しまくる。ただのオジサン政治家になんでそんなマネが出来るんだと思っていたら、「私は以前特殊部隊にいた」などと突然語り始める。そんな都合のいい設定、初めて聞いたよと思わず心の中でツッコミを入れる。徹頭徹尾この調子、こんなスーパー市長がいたら、うちの自治体にも一人ほしいわと思えることうけあいだ。

 特撮は、CGに加えて昔なつかしのミニチュアワークを多用。ときおり予算不足か、妙に荒い造形のおもちゃっぽい街が出てきたりするが、前述したとおりつくりがコメディタッチなので違和感はない。

 決してハリウッド製では見られない、珍作といってもいい中国製パニック映画。話の種がほしい人には、特にぴったりな1本といえるだろう。


■作品データ
超強台風
2010年9月25日(土)より、新宿ミラノ他 全国順次ロードショー決定!!
2008年/中国/94分/字幕:東野聡/カラー/シネマスコープ/配給:ブロードメディア・スタジオ

スタッフ
監督・製作:フォン・シャオニン

キャスト
ウー・ガン
ソン・シャオイン
リウ・シャオウェイ 他



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