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東京島

◆現代ニッポン的な「流されて…」(40点)

 最近、日本の男の弱体化が叫ばれている。草食男子などといって、デートしてもなかなか相手に手を出さない若者も増えているらしい。

 しかし、本当に日本男児は弱くなったのだろうか。マスコミが面白がって煽っているだけではないのか。いやむしろ、男が弱体化したのではなく、日本の女子が強すぎるのではないか。おしとやかな大和なでしこ風だと思い付き合ってみたら、いつの間にやら女性上位。肉食女子どころか最近の彼女らはむしろ、鬼畜女子と呼ぶべきパワーを持っているのではないか。

 そんななか、「東京島」(129分、日)が公開されるのはもはや必然であろう。戦後、孤島で謎の大量殺人がおきた「アナタハンの女王事件」を翻案した本作は、「無人島に女が一人」という定番設定を踏襲しつつも、きわめて現代ニッポン的な内容になっている

 平凡な40代主婦、清子(木村多江)は、夫と共に南国の美しい無人島に漂着した。救助などくる気配もない日々の中でサバイバルの才能を発揮する清子とは対照的に、ひきこもってばかりのダメ夫に彼女はだんだん嫌気がさしてくる。そんな折、与那国島のハードワークに耐え切れず逃げてきたダメフリーター16人(全員若い男)も漂着し、清子は島でたった一人の女としてちやほやされてゆく。

 普通ならば、一人の女の子(注・40代)を野獣どもが奪い合う殺し合いアクションか、あるいはご馳走を皆で共有する官能ドラマになるところ。しかしここは現代日本。ダメ夫にしろフリーター若者にしろ、その多くが草食男子で、彼女をめぐるトラブルなどほとんどおきはしない。

 むしろ島の各地に東京の地名(ブクロやシブヤなど)をつけ、過度な干渉を避ける妙に秩序だった暮らしまで始める始末。官能ドラマ編を期待してたと思しきヒロインだけが、話が違うじゃないのよと悔しがる始末だ。

 それでも女の武器を利用してのしあがり、生存競争の頂点に立とうとするヒロインの姿はじつにたくましい。だが、昭和的価値観というべきそのたくましさは今でも正しいのか? この時代、それで幸せになれるのか

 ゆるゆるグダグダの演出は、それがいかに現代日本らしさと言われてもイラついてしまうのは否めない。だが、我こそはという方は、この一風変わった社会学ドラマを、清子に背を向け続ける変わり者の男ワタナベ(窪塚洋介)の存在に注目しつつ読み解いてほしい。


■作品データ
東京島
2010年8月28日シネスイッチ銀座、恵比寿ガーデンシネマほかにて全国ロードショー
2010年/日本/35mm/カラー/129分/ビスタサイズ 配給:ギャガ

スタッフ
原作:桐野夏生「東京島」(新潮社 刊)
監督:篠崎誠
脚本:相沢友子
企画:鈴木律子
製作:宇野康秀、森恭一、伊藤嘉明、宮崎忠
プロデューサー:吉村知己、森恭一
プロデューサー補:新妻貴弘
撮影:芦澤明子(JSC)
照明:市川徳充
美術:金勝浩一
装飾:吉村昌悟
録音:滝澤修
コスチュームデザイン:勝俣淳子
ヘアメイク:徳田芳昌
編集:普嶋信一
音楽:大友良英
スクリプター:杉本友美
VFXスーパーバイザー:浅野秀二
音響効果:北田雅也
助監督:久保朝洋
制作担当:金子拓也
プロダクション・マネージャー:中村哲也
特別協力:エルメス
助成:文化芸術振興費助成金
製作:「東京島」フィルムパートナース
企画・制作プロダクション:ゼネラル・エンタテイメント&ユーズフィルム
配給:ギャガ

キャスト
木村多江
窪塚洋介
福士誠治
柄本佑
木村了
染谷将太
山口龍人
南好洋
結城貴史
清水優
阿部亮平
テイ龍進
趙民和
鶴見辰吾



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