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イエロー・ハンカチーフ

◆日本版への愛着が感じられる米国版「幸福の黄色いハンカチ」(55点)

 日本には、オヤジ泣かせの金字塔というべき映画が存在する。「ハチ公物語」(87年)と「幸福の黄色いハンカチ」(77年)がそれだ。もし一度でもそれを見たならば、自宅のバカ犬が忠犬に見えてきたり、黄色い布を見ただけで条件反射的に涙が出てくるという、恐るべき号泣映画だ

 相変わらず過大広告な私の文章は置いておくとして、この両者が続けざまにアメリカ映画界でリメイクされるというのは、なかなかユニークな企画といえる。だいたい、山田洋次監督「幸福の黄色いハンカチ」の原作は、小説家のピート・ハミルの短いコラムだから、本来は米国人向きのお話といえるわけだ。

 刑務所を出たばかりのわけあり中年男が、ひょんな事から若い男女と車で旅をするロードムービー。3人の出会い、物語の舞台(北海道の炭鉱町を目指すオリジナルから、ハリケーン・カトリーナの爪あとが残るルイジアナへ)は違えど、原作コラムではなく山田洋次版に忠実に作られたリメイクだ。

 収監のとき、一度は離婚届を渡したものの、「もし万が一待っていてくれたなら黄色いハンカチを一枚下げておいてくれ」と手紙を出す主人公。オリジナルでは、高倉健が物語の最終目的地、かつての妻(倍賞千恵子)が住む家につくと、そこには黄色いハンカチの満艦飾。おいおい、それってちょっと多すぎだろうよと脳内で突っ込みながら、流れる涙を止めることができない山田洋次マジック。なかせる映画は数あれど、あれほど見せ場を完璧に決めた映画はめったにない。

 結局のところ、このあまりに有名な結末がどうなっているかが、リメイクの成否を決めるといって良い。あえて詳細は記さないが、実はこの米国版、微妙にアレンジがなされている。それをどう感じるかは皆さん次第だ。私はどちらかというと否定派だ。

 実は「幸福の黄色いハンカチ」は複数の映画会社からリメイクの打診があった。結局、最も熱意があったこの作品のプロデューサーが03年に獲得したのだが、その思い入れは3人組がモーテルに泊まるシーンに如実に現れる。ここでは日本人の観客にだけ、ちょっとしたサプライズが用意される。このとき試写室内は大いにどよめき、暖かな笑いに包まれた。この物語が今でも強く愛されていると、再確認した瞬間であった。


■作品データ
イエロー・ハンカチーフ
YELLOW HANDKERCHIEF
2008年/英語(日本語字幕)/96分/字幕:石田泰子配給:松竹

スタッフ
監督:ウダヤン・プラサッド
製作:アーサー・コーン
製作総指揮:リリアン・バーンバウム
原作:ピート・ハミル
脚本:エリン・ディグナム
撮影:クリス・メンゲス
美術:モンロー・ケリー
編集:クリストファー・テレフスン
音楽:イーフ・バーズリー、ジャック・リブジー

キャスト
ウィリアム・ハート
マリア・ベロ
クリスティン・スチュアート
エディ・レッドメイン




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