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孤高のメス

◆本格的な手術シーンは一見の価値あり(55点)

 人間、健康・医療系のネタに反応するようになったら歳を取った証拠である。「ガン予防に効くキノコ」や「加齢臭を消す食べ物」、「抜け毛に効くサプリメント」なんて記事は、『POPEYE』や『ホットドッグプレス』(古い…)にはまず載らない。だが中高年向きメディアにとっては、欠かすことのできぬ大事なネタだ。ちなみに当サイトのTRYVICシリーズは個人的にオススメだ。

 って、私自身の話はどうでもいい。要するに今回紹介する映画「孤高のメス」(126分、日本)は、半裸美女が微笑みかける精力アップなサプリメント広告に思わず目が行ってしまう皆さん(決して私ではない)にぴったりな、本格医療作品ということだ。

 舞台は1980年代、地方の市民病院。赴任してきた米国帰りの新任外科医(堤真一)は、この病院が見栄や保身第一の藪医者に牛耳られている事を知る。ろくに勉強もせずプライドばかり高い彼らに対し、あくまで患者最優先の主人公は次々と難オペを成功させる。やがて現状に不満を持っていた看護婦(夏川結衣)ら、心あるスタッフの支持も集めていく。

 とはいえ、あちらを立てればこちらが立たず。患者を救うほど、主人公の病院内での立場は苦しくなる。最大派閥から疎まれているのだから当然だが、それでも揺るがぬ信念で次々と命を救う姿は感動的。後半には当時、法的にも技術的にも不可能だった脳死臓器移植を迫られる最大の見せ場が用意される。ここでの主人公の選択は、見た人の間に論議を巻き起こすだろう。

 ところで、我々医療ネタ大好き世代(オヤジと呼びたければ呼べ)には、生半可な考証は通用しない。何しろ普段からこの手の作品は見慣れているし、それなりに知識もある。嘘くさい挙動を示せば噛み付いてやろうと、私もふんぞり返って堤真一の演技を見つめていた。

 ところが彼ときたら、見事なまでに名外科医そのもの。元々演技力には定評があるが、聞けば順天堂大学で本物の手術を見学し、詳細なレクチャーを受けたのだという。おまけに暇さえあれば手術用具の取り扱いを練習するといった気合の入りよう。撮影中もそれは続けていたという。見上げたプロ根性である。

 他のキャストも同様の「講習」を受けた上、手術シーンなどは先ほどの順天堂大学医学部の医療監修チームが微に入り細に入りアドバイスを送った。そんなわけで医療面でのリアリティは文句なし。

 ちょいと脚本に荒削りな面がみられるのが難点だが、「リアルな医療もの」に期待する人にとっては及第点を与えられる。何しろこういう立派な医者がいたらいいのになと、最近病院選びのサイトばかり巡回する私などはしみじみ思う次第である。


■作品データ
孤高のメス
2010年6月5日(土)全国ロードショー
2010年/日本/カラー/126分/配給:東映

スタッフ
原作:大鐘稔彦「孤高のメス」幻冬舎文庫
監督:成島出
脚本:加藤正人

キャスト
堤真一
夏川結衣
余貴美子
生瀬勝久
吉沢悠
成宮寛貴
平田満




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