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運命のボタン

◆装置のボタンを押すと1億円ゲット、だが誰かが死ぬ(80点)

 女性というのは不思議な生き物だ。毎日チラシを入念に眺め、1円でも安いスーパーをはしごするくせに、お仲間とのランチは3,000円もするホテルのレストランで迷いなくすごす。ときには50万円もするバッグをぽんと買ってきたりする。金銭感覚以前にどこか頭のネジが飛んでるそんな女性は、はたから見ると可愛らしい。ただし、同じ家の中にお住まいの場合は悪夢である。

 ところで映画「運命のボタン」(115分/アメリカ)には、押すと1億円がもらえる夢のようなボタン装置がでてくる。もちろん、そこにはひとつだけ条件があり、押すとアナタの見知らぬ誰かが死ぬという。

 そりゃ確かにカネは欲しいが、間接的に人を殺すようなものだから普通はこんなもの押せない。だが、高級ブランドのバッグを買うように、ぽんと押してしまうのはやはり女性であった。ネジがしまっていたら、そんな重大な決断はまずできない。

 ただ、この映画に出てくる、装置を受け取った夫婦の悩みには大いに共感できる。決して貧乏ではないが、1億円(100万ドル)あったら相当助かるのが子育て世代。24時間育児と家事労働に束縛される主婦にとって、「楽になれる」との誘惑はとても魅力的だろう。

 さて、みなさんのお宅ならどうするか? もし押した場合、良心の呵責に耐えられるのか。1億じゃ少ないというのなら、いくらなら押せるのか。そんな議論を巻き起こすSF思考実験だ。

 原作は「アイ・アム・レジェンド」の原作や「激突!」(71年)の脚本を書いたリチャード・マシスンの短編。教訓的な小話でスケールも小さいこの作品を、映画は世界観を拡張、現代的なテーマも忍ばせ堂々の大作ドラマに仕立て替えた。

 衝撃の結末は原作とは異なるもので、なかなか面白い。ネジ不足な奥さん役をキャメロン・ディアスが演じているが、普段のコメディエンヌぶりを封印。南部なまりも会得し、シリアス100%の見ごたえある演技を見せている。

 「ウチの女房なら迷わず押すから、映画だったら5分で終わりだな」などといわず、愛すべきキャメロン奥様の悩みにぜひ2時間付き合って欲しい。最後まで見れば、大きな知的興奮と満足感を得られるはずだ。


■作品データ
運命のボタン
THE BOX
2010年5月8日、TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー!
2009年/アメリカ/英語/カラー/スコープサイズ/1時間55分/提供:博報堂DYメディアパートナーズ、ショウゲート 協力:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント 配給:ショウゲート

スタッフ
監督:リチャード・ケリー
製作:ショーン・マッキトリック、リチャード・ケリー、ダン・リン
製作総指揮:スー・ベイドン=パウエル、テッド・フィールド、パリス・カシドコスタス・ラトシス、テリー・ダガス、エドワード・H・ハム・Jr
原作:リチャード・マシスン
脚本:リチャード・ケリー
撮影:スティーヴン・ポスター
プロダクションデザイン:アレクサンドラ・ハモンド
衣装デザイン:エイプリル・フェリー
編集:サム・バウアー
音楽:ウィン・バトラー、レジーヌ・シャサーニュ、オーウェン・パレット

キャスト
キャメロン・ディアス
ジェームズ・マースデン
フランク・ランジェラ
ジェームズ・レブホーン
ホームズ・オズボーン




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