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第9地区

◆南アフリカにUFOがやってきたが……(70点)

 今年はサッカーのワールドカップが開催されるということで、全世界的に南アフリカ共和国が注目されている。映画界でもそれは同じで、クリント・イーストウッド監督が建国の英雄マンデラ元大統領を描いた「インビクタス/負けざる者たち」が、日本でも先日公開されたばかり。

 そしてここに、南アを舞台にしたさらなる最新作が登場した。作品賞をはじめアカデミー賞4部門ノミネートの「第9地区」がそれだ。

 ただ同じ南アといっても、偉大なるマンデラの政治手腕を称えたイーストウッド作品とはちがい、こちらは異星人の地球上陸地点としての登場。

 突如南ア上空に現れたこの巨大UFOはどうやら故障中らしく、バカみたいな数のエイリアンが乗っているものの攻めてはこない。それを見た政府は、彼らをとりあえず難民キャンプへと隔離してしまう。

 人類初の異星人コンタクトだというのにこの差別的処遇、さすがはアパルトヘイトの国である。もっとも、もしここが米国だったら問答無用で核装備のF-22がすっ飛んでくるところ。どちらにしてもろくなモノではない。

 「エイリアン入店不可」「人間専用」のたて看板などは、まさにこの国がかつて採用していた隔離政策のパロディ。人類以上に優秀な科学力を持ちながら被支配者に甘んじるエイリアンに対し、やりたい放題の現場責任者(シャールト・コプリー)。この主人公が、異様に知能の高い一体のエイリアンと出会った後、予想外の恐ろしい展開が待ち受ける。

 荒唐無稽に見えながら、いろいろなメタファーによって人間社会の本質に迫ろうというSFドラマ。エイリアンの名前、ラストシーン、主人公の運命などあらゆる要素に、表面的なものとは別の、深い寓意が含まれている。教養ある大人の鑑賞に耐える映画作品だ。

 異様にリアルなエイリアン難民キャンプの風景には驚かされるが、それもそのはず。なんと移転中だったスラム地区をまるごと買い取って、柵で囲んで撮影したそうだ。リアルというより、まるっきりの本物。こんな芸当は、さすがにこの国でしかできまい。

 そんなわけで、立ち並ぶあばら家もぶらさがる獣肉等々も、昨日まで使われていた実物。うそっぽさは皆無、臨場感は満点だ。6月のワールドカップの前菜として、ぜひすすめたい個性的な一品といえるだろう。


■作品データ
第9地区
District 9
2010年4月10日(土)、丸の内ピカデリー他 全国ロードショー!
2009年/アメリカ/カラー/111分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ、ワーナー・ブラザース映画

スタッフ
製作:ピーター・ジャクソン
監督:ニール・ブロムカンプ
脚本:ニール・ブロンカンプ テリー・タッチェル

キャスト
シャールト・コプリー
デヴィッド・ジェームズ
ジェイソン・コープ




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