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マイレージ、マイライフ

◆現代的な社会問題を、軽快なマイレージ集めの面白さと共に見せる(60点)

 前回「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」を紹介したとき、日本人はゲーム好きだと書いた。そこに今回もうひとつ付け加えたいのが、「日本人はポイントサービスが大好き」ということだ。

 この言葉じたいは和製英語だが、その概念は古くからあった。昭和の頃から、商店街でもらえるスタンプをこぞって主婦たちは集めていたし、食パンに貼ってあるシールをまとめて、たいして質のよろしくない白皿をもらって喜んだりもした。家電量販店での価格比較は、ポイント還元分を考慮に入れて行うのが今では常識だ。

 そんな日本人にとって「マイレージ、マイライフ」(米国、109分)の主人公は共感しやすい人物であろう。年間322日間も出張を繰り返す「地に足の着かない」生活を続けるこのビジネスマン、ライアン(ジョージ・クルーニー)は、そんなライフスタイルの必然か、航空会社のマイレージを貯める事だけが趣味の伊達男。

 スーツケースに入らない家や車はもちろん、家族や恋人すら持とうとせず、その日限りの消耗品として味わう彼。所有するケタはずれのマイル数の、いよいよ最終目標が近づいたとき最大の障壁が現れる。それは新人の女子社員(アナ・ケンドリック)で、彼女はなんと経費削減のため出張廃止案を提言、上司に採用されてしまう。

 ポイントサービス好きな日本人にしてみれば、ライアンは憧れの存在、文字通りのポイント王者だ。世界一周しても有り余るその獲得マイルは、すでに常人では一生かかっても達成できないレベル。そのため彼は空港や航空会社から最上級の会員として、様々な特別待遇を受けている。たくさん飛行機にのってマイルを貯めると、そのマイル自体が新たな権力=パワーを生み出すというわけだ。

 私のようなマイル凡人は、そうしたVIPサービスの詳細や、ライアンの空港における完璧なふるまい、スマートなチェックイン姿を見ているだけでも十分に楽しめる。

 それはまるである種のダンスのような流麗さで、一流のオトコそのもの。その自信たっぷりなトークで、空港で出会った美女(ヴェラ・ファーミガ)をセックスフレンドとして即ゲットするに至っては、もはや脱帽である。

 さて、そんなカッコいい彼の生き様はしかし、どうやって築いたものなのか。そこにぜひ注目いただきたい。さすれば本作の内包するほろ苦いテーマ、現代アメリカの病んだ裸の姿を、たやすく見つけられるに違いない。本作はただ面白いだけでなく、世の中の理不尽な社会構造に思いを馳せる事ができる、すぐれた社会派ドラマでもある。


■作品データ
マイレージ、マイライフ
Up in the air
2010年3月20日(土) TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー

スタッフ
監督・脚本・製作:ジェイソン・ライトマン
原作:ウォルター・キム

キャスト
ジョージ・クルーニー
ジェイソン・ベイトマン
ヴェラ・ファーミガ
アナ・ケンドリック




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