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50歳の恋愛白書

◆女性向き映画で、女性を研究する(40点)

 アーサー・ミラーの娘レベッカが、原作小説と同時進行で書いた脚本を自分で映画化した「50歳の恋愛白書」は、決して大傑作というわけではなく、ご覧のとおり点数もさほど高くない。しかしながらそのニッチなテーマは、案外大人の男が見るに値するのではないかと考え、ここに紹介することにした。

 50歳になる専業主婦ピッパ(ロビン・ライト・ペン)は、30歳年上の裕福な作家と結婚してから30年近く、安定した暮らしを満喫していた。ところが夫の健康上の問題で、老人ばかりのコミュニティに越して以来、ひとり浮き気味の状況に孤独を感じ始める。そしてそんなとき出会った女友達の息子(キアヌ・リーヴス)に、ピッパは強く惹かれてしまう。

 キアヌ・リーヴスといえば、全女性があこがれる文句なしのイケメン。すわ、50代熟女の妄想、いや願望を具現化した見るもおぞましいエセ韓流ドラマか、と思いきやさにあらず。この映画は中高年の恋愛と、それが女性の人生に及ぼす影響をいたって真面目に観察したドラマであった。

 いまどき恋愛映画を見るのは、いまだ頭の中がバブル時代から抜け出せず、いつかたくさんお金を持った王子様が私にも……と夢見る女の子(推定39歳)くらいだろう。だから彼女たちの共感を集めるため、恋愛映画のヒロインはどんどん高齢化している。本作も、そうした女の子(推定……以下略)たちが見れば、たくさんの「あるある」ポイントに高揚感をおぼえる仕組みになっている。

 そんな女性映画……女性監督が、女性のために作ったドラマ──を男が見ればどうなるか。いうまでもない、女性分析の最高の教材となる。50歳のピッパは、一見清楚な奥様だが、その過去はすさまじいほどに波乱万丈だ。織り交ぜられる回想シーンでそれが徐々に明らかになるあたりが、本作のエキサイティングな見所といえる。

 そしてそれを見て思うのは、女性というのはじつに愛らしく、そして愚かしいということ。この作品はもとより男性客を意識していないつくりだから、我々は俯瞰のごとき高みからヒロインの生き様を眺めることができるわけだが、そこで気づくのはこの映画のヒロインも、それどころかこれを作った人も、とてつもなくこじんまりとした価値観の中で踊っているに過ぎないということだ。そしてきっと、これを見て喜ぶ女性客も、そのミニマムな世界の中だけで生きている。

 抽象的な言い方しかできないのがもどかしいが、男性ならば注意深く見ればきっとこの意味がわかるはず。たとえそれでなくとも、多くのインスピレーションを与えてくれる一本だと私は思う。とくに女房、恋人の事がときおりわからなくなる……という方は、この映画に重要なヒントが隠されているかもしれない。


■作品データ
50歳の恋愛白書
The Private Lives of Pippa Lee
2010年2月よりTOHOシネマズみゆき座ほかにてロードショー
2009年/アメリカ/カラー/98分/
配給:ギャガ・コミュニケーションズ

スタッフ
監督・脚本:レベッカ・ミラー

キャスト
ロビン・ライト・ペン
アラン・アーキン
マリア・ベロ
モニカ・ベルッチ
ブレイク・ライブリー
ジュリアン・ムーア
キアヌ・リーブス
ウィノナ・ライダー
マイク・バインダー
シャーリー・ナイト




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