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ATOM

◆息子を持つ父を泣かせる傑作リメイク(90点)

 いい年をしたオヤジがアニメーションを、それも映画館で見るのはどんな時だろう。きっと話題の宮崎アニメとか、子供にねだられたポケットモンスターやコナンを、退屈な思いで見るのが関の山、といったところか。いずれにしても、貴重な時間を退屈な思いで過ごすのはきつい。

 そんなわけで、当コラムでアニメやファミリー映画を紹介する際は、なるべく良質なものをと考えているのだが「ATOM」(香港/米)はまれにみる、オヤジを泣かせる良品であった。

 原作はあの「鉄腕アトム」。香港を拠点にするイマジ・スタジオが制作、ボイスキャストには名だたるハリウッドスターの名が並ぶ話題作で、米国ではなんと3000スクリーン以上での上映が決まっている本気の一本。手塚治虫生誕80周年を記念する大作だ。

 ロボット工学が究極の進化を遂げた都市メトロシティ。科学省長官のテンマ博士(声:ニコラス・ケイジ)は、ある日事故で最愛の息子トビー(声・フレディ・ハイモア)を失う。悲しみにくれる彼は、息子のDNAからすべての記憶を再現し、最新のロボットに移植するのだが……。

 日本発のアニメ「鉄腕アトム」は、痛快アクションの魅力はそのままに、悲劇に打ちひしがれる父親と、どうしてもその息子になれない責任を感じる心優しいロボットの、切ない親子愛の物語となった。

 米国市場向けらしく、新アトムは3DCGで描かれる。えらく美形な顔とそのリアルな質感が、人形ぽさを強調し、オールドファンにはどうにもすわりがわるい。私も映画が始まるまでは、このキャラデザインはキツいなと感じていた。

 しかし、動き出すとこれが大違い。オリジナルのアニメ版以上に豊かな感情表現があふれ出し、一瞬で引き込まれた。新鋭イマジスタジオの技術力は相当なもので、今回はあえて書き込みを省略したという背景も、そのシンプルさがむしろ中央のキャラクターをより強調する効果を生んだ。これは葛飾北斎の絵を参考にした演出だというのだから、香港のスタジオとはいえ侮れない。

 そんな事からわかるように、本作には日本文化、とくに手塚治虫と原作アニメに対する尊敬の念が、随所に感じられる。手塚本人を模したキャラなど、手塚作品の名脇役があちこちに3Dで登場するし、アクションシーンの組み立ても、どこか日本古来の2Dセルアニメを髣髴とさせる。

 このあたりは、デヴィッド・バワーズ監督以下、長年のアトムマニアが居並ぶ制作陣のチームワークの賜物に違いない。なにしろプロデューサーのマリアン・ガーガーなどは、「アトムは日本の国宝」とまで語る入れ込みよう。やはり「原作を愛する人々」が作ったものは、たとえ外国製であっても駄作にはならない。

 今月、アトムくらいの息子を持つ父親が、親子で見るならこれで決まり。センス抜群のラストシーンを見た瞬間には、思わず拍手したくなるほどの感動が待っている。


■作品データ
ATOM
Astro Boy
2009年10月10日(土)より新宿ピカデリー他全国ロードショー!!
2009年/アメリカ/カラー/提供:角川エンタテインメント 配給:角川映画 角川エンタテインメント

スタッフ
原作:手塚治虫「鉄腕アトム」より
監督:デビッド・バワーズ
脚本:ティモシー・ハリス
制作:マリアン・ガーガー

ヴォイスキャスト(字幕版)
フレディ・ハイモア
クリスティン・ベル
ネイサン・レイン
ユージン・レヴィ
ビル・ナイ
ドナルド・サザーランド
ニコラス・ケイジ




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