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TAJOMARU

◆芥川龍之介『藪の中』を基にしたスタイリッシュ時代劇(55点)

 オセロという有名なボードゲームがある。両端を自分の駒ではさめば、間がすべて同色に染まるというやつだ。映画の中にもそういう構成のものがあり、この「TAJOMARU」(131分/日本)などはその典型。つまり、最初と最後があまりにトホホなために、どう転んでも傑作になれないという残念なパターンだ。しかしその、途中のもろもろが良くできているだけに、このまま捨てるには惜しい。そんなわけで、この場を借りて皆さんに紹介しておこうと思う。

 ときは室町時代の末期。名門・畠山家の次男・直光(小栗旬)は、愛する幼馴染の阿古姫(柴本幸)と婚約を交わしていた。ところが彼女の父親が急逝し、その莫大な遺産を得る事になる阿古姫の夫に、畠山家の家督も譲られることになった。兄・信綱(池内博之)は「阿古さえいれば、財産も管領職も兄者へ譲る」との直光の言葉を信じられず、力ずくで阿古姫を手篭めにしようとするが、それが悲劇の始まりだった。

 兄、弟、姫。3人の仲良し子供時代から始まる本作。その場面は思い切り学芸会レベルでいきなり萎えるが、成長後の姿として小栗旬らが登場すると場の空気が引き締まる。彼の持つスター性、池内博之の安定した演技、柴本幸の「まったく真意の読めない表情」により、その後のサスペンスも無事軌道に乗る。

 話の展開としては、愛する男女二人が非情な運命から逃げるという、いかにもありがち(?)な道をたどるのだが油断するべからず。コトはそう単純ではない。3人が子供時代、純粋な善意から召抱えた孤児の桜丸(田中圭)による陰謀が絡み、4人の裏切り合いは、予想もつかぬ方向へと転がっていく。

 原作はおなじみ芥川龍之介の『藪の中』。黒澤明の『羅生門』(50年)の原作として知られるこの物語は、ハリウッドを含む世界中のサスペンス作家に影響を与えたことでも有名だ。本作でも、観客に提示される「真相」は次々とその姿を変え、大どんでん返しの連続による「騙される快感」を存分に味わえる。

 ただ個人的には「あそこで止めておけばよかったのに」と強く思う箇所が一点存在する。そこで映画を終了しなかった理由もわからぬでもないが、小栗旬が俳優として全力で挑んだそのシーンにおける迫真の演技、これが見事だっただけになおさら蛇足感が強い。

 とはいえ、そうした美点を味わうだけでも平均点以上の面白さは楽しめる。最初と最後の駒さえなければ……と思わぬでもないが、それは無いものねだりというものか。


■作品データ
TAJOMARU
TAJOMARU
2009年9月19日、丸の内ルーブル系にてロードショー
2009年/日本/カラー/131分/配給:ワーナー・ブラザース映画

スタッフ
監督:中野裕之
脚本:市川森一、水島力也「藪の中」芥川龍之介著より
プロデューサー:山本又一朗
共同プロデューサー:佐谷秀美
ラインプロデューサー:大里俊博
アソシエイト・プロデューサー:野村祐人
キャスティングディレクター:富田敏家

キャスト
小栗旬
柴本幸
田中圭
やべきょうすけ
池内博之
松方弘樹
本田博太郎
近藤正臣
萩原健一




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