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ハゲタカ

◆わかりやすい経済エンタテイメント(70点)

 ちょいと前までは、日本経済を食荒らす元凶のようにいわれていたハゲタカファンド。金融危機が勃発してからは、当の彼らが焼き鳥状態に炎上しているものの、そのえげつない、しかし鮮やかな金融テクニックの数々は、ドラマの見せ場として十分成立する。

 そんなわけで、内外から高い評価を受けたNHKドラマ「ハゲタカ」(07年放映)が、待望の劇場版になった。スタッフ、キャストはドラマ版を踏襲、重厚な雰囲気の本格作品として、いわゆる「テレビドラマの安直な映画化」とは一味違う出来栄えだ。

 脚本は、金融危機発生を受け、製作途中で大幅に変更。中国政府をバックにした新興ファンドが、日本を代表する大手自動車会社の買収を仕掛けてくるリアルストーリーとなった。

 最後の砦として企業防衛にあたるのが、主人公、鷲津政彦(大森南朋)。かつては企業買収における豪腕ぶりで知られた彼が、本作では日本経済を守る最強の盾となる。シリーズファンにはたまらない設定だろう。

 かといって、映画版から入る人はダメというわけではなく、むしろ問題なく楽しめる。ユーモアは少ないガチンコ経済ドラマだが、難解すぎて観客を置き去りにすることもない。普通のサラリーマンとして、日々時事問題に興味を持っている人であれば、専門用語の連発にも戸惑う事なく、スピード感あふれる展開を堪能できるだろう。

 ちなみに厳密に言うと、本作に出て来る中国系ファンドは、「企業価値を高めて高値で売りさばく」ハゲタカ、とは少し違う。買収した企業の機密やノウハウを骨までしゃぶり、中国系企業に明け渡した上で使い捨てにしようと企む(=焦土的経営)真の悪だ。

 ハゲタカファンドならまだ多少の正義があるが、あえてこのような完全なる"悪"に設定し、国家産業のアイデンティティを防衛する側との明快な対決構図にすることで、映画的快楽度およびエンタテイメント性は大いに高まった。

 急速な金融不況突入により、一時は「ハゲタカのネタなんてとっくに時代遅れ」となりかけた企画だが、うまくその危機を脱したようだ。現実の不景気も、このくらい鮮やかに脱出してくれると助かるのだが。


■作品データ
ハゲタカ
2009年6月6日(土)全国東宝系ロードショー
2009年/日本/カラー/??分/配給:東宝

スタッフ
監督:大友啓史
脚本:林 宏司
原作:真山 仁 『ハゲタカ』『ハゲタカU』(講談社文庫) 『レッドゾーン』(講談社刊)
音楽:佐藤直紀
撮影:清久素延
美術:花谷秀文
録音:湯脇房雄
照明:川辺隆之
編集:大庭弘之
助監督:會田 望
製作担当:石井仁朗
音楽プロデューサー:岩瀬政雄
製作:NHKエンタープライズ 東宝 講談社 博報堂DYメディアパートナーズ ヤフー・ジャパン TOKYO FM 日販 TSUTAYAグループ 読売新聞 ニッポン放送
企画:NHKエンタープライズ
製作プロダクション:東宝映画
配給:東宝

キャスト
鷲津政彦:大森南朋
劉一華:玉山鉄二
三島由香:栗山千明
守山翔:高良健吾
古谷隆史:遠藤憲一
西野治:松田龍平
飯島亮介:中尾彬
芝野健夫:柴田恭兵
嶋田久作




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