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バンコック・デンジャラス

◆男が憧れるストイックな生き様と、理想的なヒロインにウットリ(85点)

 久々に、「オトコ専門」とでもいうべき映画を見たので紹介したい。

 「バンコック・デンジャラス」(100分/アメリカ)は、ニコラス・ケイジ主演のハードボイルド・アクション。彼が演じるのは孤独な殺し屋という、まさに女っ気ゼロのハードなご職業。労働基準法に守られない激務に疲れ果てたか、若くして引退を願っている。

 そんな男が選んだ最後の仕事が、タイの首都バンコクにおける4件の暗殺依頼。これをケジメに足を洗おうというわけだが、そういう仕事はたいてい失敗する。

 これまで成功率100パーセントを誇る主人公には、自分に課したいくつかのルールがある。「カタギと関わるな」「跡を残すな」など、確かに納得いくものばかり。ところが引退の2文字が念頭にあるせいか、今回彼は片っ端からそれを破ってしまう。

 使い捨て助手のはずの現地雇いの男に殺しの技を仕込んで弟子にしようとしたり、薬局の女の子と恋をしたり。そうしたもろもろが、完璧なはずの腕前を鈍らせ、悲劇を招くことになる。果たして主人公の運命やいかに。

 この、薬局のタイ人美少女との恋愛パートがいい。外国人で言葉が通じず、それどころか彼女は耳も口も不自由なので、デート中は一切会話をしない。なのに心が通じ合っていく。いい男ならば、たとえ無言でも魅力が伝わる、これぞ男のロマン。

 「こんなに純粋で美人で、男につくすのが趣味みたいな都合のいい女がいるわけないでしょ」とは本作を見た某女性ライターの弁だが、そんな意見を気にする必要はない。そもそもハードボイルドというジャンルは、理想的な男の生き様に感情移入して惚れ惚れとする、いわば男のためのファンタジー。現実にいようがいまいが、我々の琴線に触れればそれでいいのだ。

 だいたいこの主人公ほど、ハードボイルドを体現しているキャラはいない。完璧な仕事ぶり、ストイックな態度、どこをとってもビジネスマンにとって最高のお手本である。ひとごろしが生業という以外は。

 演じるニコラス・ケイジが、美男子すぎないという点もよろしい。完璧なキャラクターに、ちょっぴりの弱みを残す人物造形は、人々の共感を誘うための鉄則である。

 演出は細部にまでこだわった本格派で、レモングラスの香り漂う汗ばんだタイの空気を、全面ロケで見事に再現。安っぽいハリウッドものとは一味違う、リアリティの塊のような骨太アクションを堪能できる。せつないラストを盛り上げる音楽も一級品。大人の男が一人で見に行くのにピッタリだ。


■作品データ
バンコック・デンジャラス
Bangkok Dangerous
2009年5月9日 渋谷東急 109シネマズ×ユナイテッド・シネマほか全国ロードショー
2008年/アメリカ/カラー/100分/配給:プレシディオ

スタッフ
監督:ダニー・パン&オキサイド・パン

キャスト
ニコラス・ケイジ
チャーリー・ヤン
シャクリット・ヤムナーム




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