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ウォッチメン

◆アクション一流、政治映画としても一流(98点)

 アメコミ映画は日本じゃ売れないというのは、この業界では定説。だいたい、アメリカンコミックス自体、普及してないのだから仕方ない。主人公はマッチョなオジサン、ヒロインはゴツい顔したブロンド熟女──といったアクの強いイメージが、なにしろ一般人を遠ざけている。

 とはいえ、そうした偏見によって敬遠するには惜しい傑作揃いなのもまた事実。とくに近年は大人向けのドラマ仕立てにするのが人気で、昨年の『ダークナイト』(08年、米)などは日本以外じゃ歴史に残る大ヒット&高評価を得ている。

 『ウォッチメン』(163分、米)もその流行に乗った超大作で、なんとR-15指定(中学生以下鑑賞禁止)。もとより子供は見るな、というわけだ。じっさい哲学的で難解な結末のメッセージを読み解くのは、大人でも手ごわい。

 舞台は1985年、いまだニクソン大統領が活躍中の米国(現実では74年のウォーターゲートで失脚)。米国の国益を守る超法規的自警団=ヒーローチームの"ウォッチメン"は、しかしヒーローといっても一人を除いてみな生身の人間。容疑者への行き過ぎた暴力もしばしばで、市民の反発が高まった結果、77年にヒーロー規制法が発動、強制的引退を余儀なくされていた。そんなとき、メンバーたちが次々と暗殺される事件がおきる。

 ケネディ暗殺やベトナム戦争など、幾多の歴史的事件がこの世界でも起こる。ウォッチメンはそれらにどう関わったのか。暗殺事件との関連はあるのか。現実のパロディとして、明らかに現代の世情を比喩する物語は、しかし解釈のためには時事問題や国際政治についての素養を必要とする。

 その意味では、進行中の対テロ戦争を念頭に脚本が書かれた『ダークナイト』の趣向と同じだが、こちらはより複雑だ。

 米国では週末に映画に出かけた人のうち、2人に1人がこれを見たほどの大ヒットスタート。だがはたしてその何人が、作品の深部に横たえられた深いメッセージまで到達した事だろう。日本でも、ぜひその領域まで、"大人だけで"味わってほしい。そうすればこれが、年間いくつもない、真に優れた傑作のひとつとわかるはずだ。


■作品データ
ウォッチメン
WATCHMEN
2009年3月28日(土)より、丸の内ルーブルほか全国ロードショー
2009年/イギリス・カナダ/カラー/163分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

スタッフ
監督:ザック・スナイダー
原作:グラフィック・ノベル「WATCHMEN」デイヴ・ギボンズ作(DCコミックス)
製作総指揮:ハーバート・W・ゲインズ、トーマス・タル
製作:ローレンス・ゴードン、ロイド・レヴィン、デボラ・スナイダー

キャスト
ジャッキー・アール・ヘイリー
パトリック・ウィルソン
ビリー・クラダップ
マリン・アッカーマン
マシュー・グード
ジェフリー・ディーン・モーガン




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