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ベンジャミン・バトン 数奇な人生

◆老人で生まれ、赤ん坊で死んでいく男の物語(75点)

 どんなに愛した女でも、そのうち気持ちにズレが生じてくる。だがそれでも多くの男女は、そのズレを修正しつつ、あるいは適当に妥協しながら寄り添って生きる。

 そんな"平凡な人生"を、思い切り非凡な設定で描いた『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(167分/米国)は、まさに人生の酸いも甘いも味わいつくした大人のためのドラマ。ファンタジーの中に、象徴的に描かれた真実を感じ取れる人にこそすすめたい、珠玉の一品だ。

 主人公のベンジャミンは、なんと80歳の姿をした赤ん坊、という状態で生まれる。そして成長に従いどんどん若返るという、通常の人間とは逆の一生をたどる。その過程で様々な美しいものを見、すばらしい人々と出会い、そして最愛の女性と恋をする。人生の流れが逆になると、何がどう浮き彫りになるのか。そこに注目してみてほしい。

 主人公のブラッド・ピットと、ヒロインのケイト・ブランシェットは、当代きってのスター俳優であり演技派。互いの年齢、とくに精神年齢がピタリと合う、ほんのわずかな期間に燃え上がる恋を、せつなく演じきる。若作り&老けメイクのため、細かい部分で相当強引なCG修正が行われているように見受けられるが、気づかぬふりをしてやるのが大人のマナーというものか。

 設定上、老練な男と幼い少女という形で出会う二人。やがて彼らはそれぞれ逆方向へと成長し、無垢な少年と老女という関係へ変化していくわけだが、これがじつに象徴的だ。誇張はあれど案外これ、現実の男女関係に近いものがあるのではないか。男は年をとれば子供にもどる。女はそんな男を穏やかに眺める。そういう関係は、決して悪いものじゃない。もちろん、不幸でもない。

 際限なく若返り、死に向かっていくベンジャミンの人生は、そんなわけで当初予想したよりずっと幸せそうに見える。とても意外なことだが、これはそのまま私たち自身の人生への肯定感につながる。こうしたファンタジーこそ、大人の男が見るにふさわしい。


■作品データ
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
The Curious Case of Benjamin Button
2009年2月7日(土)より、丸の内ピカデリーにて全国ロードショー
2008年/アメリカ/カラー/167分/配給:ワーナー・ブラザース映画

スタッフ
監督:デビッド・フィンチャー
脚本・映画版原案:エリック・ロス
映画版原案:ロビン・スウィコード
原作:F・スコット・フィッツジェラルド

キャスト
ブラッド・ピット
ケイト・ブランシェット
タラジ・P・ヘンソン
ジュリア・オーモンド
ジェイソン・フレミング
エル・ファニング




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