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誰も守ってくれない

◆加害者の家族の人権を守る刑事を描く、賛否両論必至の社会派ドラマ(70点)

 「踊る大捜査線」シリーズのスタッフが、本格的な社会派刑事ドラマを撮ったらしい。……と聞いても、申し訳ないがまったく興味はわかなかった。私はあの特大ヒット映画を、二つともまるで評価していない。

 だが『誰も守ってくれない』(118分/日本)の上映が始まったとたん、その考えを改めた。見る人が見ればわかる。この作品の秀逸なオープニングは、安直なテレビドラマ映画化とは異質な、"本気"を感じさせるに十分だ。

 犯人である少年宅へ踏み込む刑事たち。戸惑う少年の母を尻目に、次々と突入するその人数の多さから、観客にはこれが尋常ではない重大犯罪の逮捕の瞬間だと知れる。そこに同時刻の学校で、無邪気に遊ぶ高校生の妹の笑顔が何度も挿入される。そのすべてが無台詞、無音で、美しい旋律の曲だけをバックに、スローモーションで展開する。

 逮捕されたのは、どうやら世間を震撼させた凶悪殺人事件を起こした少年らしい。そして物語は、残された"加害者"家族、とくに先述した妹に焦点を当てて進行する。厳密な意味での主人公は、彼女をネットやマスコミ等、様々な攻撃から守る刑事(佐藤浩市)だ。

 つまり本作は、「加害者の家族を守る刑事」がテーマ。「踊る大捜査線」シリーズの脚本家として、長年にわたり警察関係者へ取材を重ねてきた君塚良一監督が、一度はやっておきたかった題材だという。彼によれば、警察は公式には決して認めないが、こうした仕事をする刑事は実際にいるらしい。世間からのバッシングにより、加害者家族が自殺するケースが相次いだのが理由という。

 被害者でなく加害者家族の人権。いかにも物議をかもしそうな話だ。「踊る〜」のリサーチ過程で得た、しかし「踊る」にはそぐわぬ生々しい材料だけで作った一品。オープニングに代表されるような真剣味溢れる撮り方も、演技力重視のキャスティングも、確かにまじめな社会派ドラマのそれだ。

 とはいえ、刑事たちの、"らしからぬ"オシャレな服装など、「踊る〜」の客層を意識したような派手なエンタ性も残っている。これまでテーマ性の強いドラマなど見なかったような人々をも、取り込んでいこうというわけか。

 いずれにせよ、オリジナル企画&脚本の意欲作として、私は本作を強く支持したい。荒削りな面はあるものの、新世代の日本映画の、まさに新たなる挑戦だ。


■作品データ
誰も守ってくれない
2009年1月24日(土)より、お正月第2弾 全国東宝系ロードショー
2008年/日本/カラー/118分/配給:東宝

スタッフ
監督:君塚良一
製作:亀山千広
脚本:君塚良一、鈴木智
音楽:村松崇継
美術:山口修
編集:穂垣順之助
VFXディレクター:山本雅之

キャスト
佐藤浩市
志田未来
松田龍平
石田ゆり子
佐々木蔵之介
佐野史郎
木村佳乃
柳葉敏郎




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