トップページ激映画批評

激映画批評

バックナンバー


デトロイト・メタル・シティ

◆こんなはずじゃなかった若者の人生をみんなで笑う映画(80点)

 先日「ホット・ファズ」というイギリス映画が日本で公開された。本来ビデオスルーされるはずだったが、監督らのファンによる熱烈な署名運動の結果、劇場公開が決まったのだ。なぜ未公開になりかけたかといえば、この手の英語圏向けコメディは日本じゃ大抵受けないから。要は笑いのツボが違うというわけだ。

 とはいえ、じゃあ日本製なら面白いのかといえば、必ずしもそうではない。チャンネルを変えまくるザッピング視聴者の目を引くため、瞬発力重視のお笑いが蔓延するテレビ番組に慣れた観客を、映画館で2時間くすぐり続けるのは容易ではない。結局、脱力系だのオフビートなんてよくわからない言葉に逃げる、独りよがりな作品が劇場を占拠することになる。

 ところが、ようやく誰もが笑い楽しめる王道のギャグ映画が登場した。『デトロイト・メタル・シティ』(104分/日本)がそれで、超人気漫画の実写化ながら未読者でも問題なく爆笑できる。

 主人公の気弱な青年は、本当はオシャレ系のポップス歌手になりたかったが、事務所の意向で正反対のデスメタルバンドをやらされる。ところが意外にも大ブレイク、やめるにやめられなくなってしまう。白塗り悪魔メイクで素顔を隠し、レイプだの殺害だのといった過激な歌詞をシャウトしまくる姿では、田舎の家族に報告すらできない。おまけに大好きなカノジョは、その手のバンドが大嫌い。結局、誰にも自慢できないという、情けないジレンマに悩むことになる。

 カリスマメタル歌手を松山ケンイチが好演。オドオドした素の主人公と合わせ、両極端な二役?を見事に演じ分ける。そのギャップの大きさがまた笑いを呼ぶ。

 主人公は、ひとたび悪魔メイクをすればライブハウスを熱狂させるヒーロー。なのに、休みの日に素顔のまま街角でポップスを歌うと、皆から「キモい」と罵倒される。たしかに、いまどきマッシュルームカットの男が、満面の笑顔でナヨナヨと体をくねらせ弾き語る姿はとても不気味だ。だが、彼が本当にやりたいのはこういう音楽なのだ。人生はなかなかうまくいかない。そこが笑え、いや気の毒なところだ。

 カジヒデキら本物のアーティストによる楽曲はどれも素晴らしいもので、音楽映画としても一級品。逃げも隠れもせぬ、堂々たる本格エンタテイメントの誕生はうれしい限りだ。


■作品データ
デトロイト・メタル・シティ
2008年8月23日(土)全国東宝系ロードショー
2008年/日本/カラー/104分/配給:東宝

スタッフ
原作:若杉公徳「デトロイト・メタル・シティ」(白泉社ヤングアニマル連載中)
監督:李闘士男
脚本:大森美香
音楽:服部隆之

キャスト
根岸崇一=ヨハネ・クラウザーII世:松山ケンイチ
相川由利:加藤ローサ
西田照道=カミュ:秋山竜次
和田真幸=アレキサンダー・ジャギ:細田よしひこ
デスレコーズ社長:松雪泰子




ページの先頭へ戻る