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敵こそ、我が友 〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜

◆バルビーのドキュメンタリー (65点)

 せっかくの夏シーズンだってのに、今年の劇映画には決定打となりそうな傑作がない。その代わりドキュメンタリーはなかなかなので、前回に引き続きご紹介する。

 クラウス・バルビーとは、ナチス・ドイツの元中尉。一般には「リヨンの虐殺者」と異名をとる残忍な拷問者のイメージで知られている。本作は彼の数奇な人生を時系列に沿って追う。短時間で知識のブラッシュアップを図れる、歴史ドキュメンタリーのお手本のようなつくりになっている。

 ナチスものは欧米では定期的に作られる定番素材だが、歴史的に大きな被害を受けたフランス発のものは立ち位置が明確な事が多く、見る側としても迷わずにすむ。すなわち、ゆるぎない批判的見地である。そうした立場にありながらも観客を感情的に煽ったりせず、淡々と証言を積み上げていく態度は好ましく感じる。さすが、戦後数え切れぬほどこの題材を扱ってきただけの事はありる。

 本作を見ると、クラウス・バルビーがパリの治安担当者だったころ、子供たちを含むユダヤ人や共産主義者を多数手にかけていたことがわかる。特徴的なのは、部下に命じるのみならず、自ら手を下す事さえあったこと。それがサディスティックな性格によるものか、ある種のプロ意識なのかは本人が亡くなった今、知ることは不可能だが、涙ながらに語る関係者の様子は痛ましい限り。

 そんな彼が、戦後処刑されずに世界の裏側で活躍できたのはなぜなのか。その真相を本作は明らかにする。そう、クラウス・バルビーは戦犯なのに、ドイツ敗戦後ものうのうと生き延びたのだ。

 彼のその後の人生を追うことは、戦後の諜報史を知ることにつながる。チェ・ゲバラ殺害やCIAのロシア対策に深くかかわった血まみれの人生。死の人材再利用とでもいうべき国際社会のえげつなさを見て怒りを感ずるか、やるせなさを感ずるか。それは観客であるあなた次第だ。


■作品データ
敵こそ、我が友 〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜
MON MEILLEUR ENNEMI(仏)/MY ENEMY'S ENEMY(英)
2008年7/26、銀座テアトルシネマほか全国ロードショー!!
2007年/フランス映画/1時間30分/1.66/35mm/Dolby SR-SRD/日本語字幕:寺尾次郎/配給:バップ、ロングライド

スタッフ
監督:ケヴィン・マクドナルド
プロデューサー:リタ・ダゲール

キャスト
ナレーション:アンドレ・デュソリエ




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