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いま ここにある風景

◆中国の恐るべき環境破壊の様子を切り取ったドキュメンタリー (65点)

 北京五輪の開催をはじめ、毒ギョーザ事件や長野聖火リレーにおける沿道占拠、パンダレンタル1億円と、その是非はともかく中国の存在感は日に日に高まっている。中でも安価な工業製品の氾濫は、私たちにとってもっとも身近な問題だろう。モノが安く手に入るのはありがたいが、同時に輸出先の製造業は壊滅に追い込まれる。そのため「世界最大の失業者輸出国」と揶揄されるかの国の「いま、ここにある風景」。それがこのドキュメンタリーのコンセプトだ。

 カナダの写真家に、エドワード・バーティンスキーという男がいる。彼は社会の発展が環境に与える変化を撮り続けてきたカメラマン。平たく言うと、産廃処理場や工業地帯、汚染された川などの写真を作品とする。彼が切り取ると、そうした風景がまるで不思議なアートの世界になってしまう。

 その彼が今一番興味を持つ国、中国を撮影して回る様子をカメラは追う。先述したように「カメラマンへの密着取材」ではなく「ここにある風景」を伝える事が主目的だから、実際に起きている想像を絶する規模の環境破壊そのものをしっかり確認する事が出来る。

 誰もが仰天すると思われるのが、建設中の三峡ダム。完成後は世界最大となるこの地球改造(そう表現したくなる)は、発電能力が水力のくせになんと原発の数十倍。周辺の町や村はもちろん水没。一度試しに水をためただけで地震がおきたという、冗談みたいなスケールだ。

 その建設風景はまるでSF。見渡す限り上も下も向こうもこっちも、延々と足場が組まれ無数の労働者がうごめいている。きっとピラミッドや万里の長城建設もこんな感じだったのではないかと思わせる風景だ。今時こんなバカげた規模の土木工事が存在するのは、世界広しといえどこの国しかあるまい。

 あくまで芸術家の視点ということで、批判的スタンスでないのが少々歯がゆいが、これはもはやビックリ映像大集合と呼んでいいレベル。日本の片隅でうじうじ悩んでいるのがバカらしくなるほどのパワーがそこからは感じられる。と同時に、これじゃ餃子の一つや二つに農薬が混入したって、誰も何とも思わないわなと妙に納得。


■作品データ
いま ここにある風景
Edward Brtynsky; Manufactured Landscapes
2008年7月12日(土)、東京都写真美術館ホール、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー 
2006年/カナダ/カラー/87分/配給:カフェグルーヴ、ムヴィオラ

スタッフ
監督:ジェニファー・バイチウォル
撮影監督+クリエイティヴ・コンサルタント:ピーター・メトラー

キャスト
エドワード・バーティンスキー




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